パックス・シリカは、AI技術に不可欠な半導体や重要鉱物の確保に向けた取り組みだ。シンガポールやオランダ、英国、イスラエル、UAEなども関与する。パックス・シリカという名称は、ラテン語で平和を意味する「パックス」と、半導体製造で使われる「シリカ(二酸化ケイ素)」を合わせた造語だ。
サプライチェーンのセキュリティを強化し、中国を念頭にした依存関係などを解消するために協力していくことを確認した。米国のジェイコブ・ヘルバーグ国務次官はこう述べている。
「20世紀は石油と鉄鋼で動いていたが、21世紀はコンピュート(計算能力)とそれを支える鉱物資源によって駆動する。この歴史的なパックス・シリカ宣言は、エネルギーや重要鉱物から高度な製造、モデル開発に至るまで、明日のAIエコシステムを同志国が確実に構築していくための、新たな経済安全保障上の合意の到来を告げるものだ」
そもそもレアアースとは、31鉱種あるレアメタルの一種で、17種類の元素の総称だ。
中国はずいぶん前から、レアアースの重要性に気付いていたとされる。中国の最高指導者だったケ小平は1992年、重希土類(重レアアース)の産地である江西省を視察して、「中東有石油、中国有稀土(中東には石油が、中国にはレアアースがある)」と発言。「一定把我国稀土的優勢発揮出来(中国のレアアースの優位性を必ず発揮させなければならない)」という趣旨の指示もしていたという。
30年以上たった今、ケ小平の言葉がまさに現実になっている。中国は現在、政府による補助金や環境汚染を度外視した開発の推進によって、レアアースの分離・精製を行える数少ない国の一つになっている。分離・精製分野のシェアは90%に及び、レアアース全体の供給でも世界で70%のシェアを占める。
中国はその優位性を外交カードとしても使っている。例えば、2010年に尖閣諸島沖で中国漁船が海上保安庁の巡視船に衝突した際、中国が輸出枠の大幅な削減や禁輸措置に近い方針を打ち出したことで世界が動揺した。結果的に、日本や米国、EUが「中国による輸出規制は不当な貿易制限」として2012年に世界貿易機関(WTO)に提訴。2014年に日米欧側の勝訴が確定し、中国は輸出枠制度の撤廃に追い込まれた。
レアアースが手に入らなければ、半導体の製造もままならない。2026年も引き続き、レアアースの確保が日本をはじめとする先進国の大きな課題である。その動向から目を離すべきではないだろう。
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