リテール大革命

ドバイ「世界最大の靴専門店」が示す、これからの小売店の勝ち筋 総合型はもう限界か?がっかりしないDX 小売業の新時代(1/2 ページ)

» 2026年01月15日 07時00分 公開
[郡司昇ITmedia]

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「全社員AIワーカー化」を通じた業務効率化と生産性向上の取り組み

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【概要】クレディセゾンでは2019年より内製開発を武器としたDXを推進してきました。本年度からは「CSAX戦略」を掲げて全社員にChatGPT Enterpriseを配布。「全事業部、全社員の業務を、AIを前提に再設計」し、2019年からの累計で300万時間の業務削減を目指します。本セッションではCSAX戦略の全容と、パイロットプロジェクトで得られたROIや成果についてお話しします。

連載:がっかりしないDX 小売業の新時代

デジタル技術を用いて業務改善を目指すDXの必要性が叫ばれて久しい。しかし、ちまたには、形ばかりの残念なDX「がっかりDX」であふれている。とりわけ、人手不足が深刻な小売業でDXを成功させるには、どうすればいいのか。長年、小売業のDX支援を手掛けてきた郡司昇氏が解説する。


 「何でもそろう店」は、なぜ人を引きつけられなくなったのか――。

 昨今、日本の小売業界では、総合スーパー(GMS)の苦戦が続いています。イトーヨーカ堂の大量閉店に象徴されるように、品ぞろえの幅広さだけでは、ECとの価格競争や利便性競争に太刀打ちできない時代に入りました。

 一方で、生活者の購買行動は変わっています。情報過多の時代だからこそ、「信頼できる専門家に相談したい」し、「時には選択を委ねたい」とも考えます。つまり、店舗には“買う場所”以上の役割が求められるようになったといえます。

 そうした中で注目を集めているのが、カテゴリーを極限まで深掘りし、店舗そのものを“目的地”に変える戦略です。

 世界最大の靴専門店「レベルシューズ」は、その象徴的な存在といえるでしょう。単なる巨大専門店ではなく、デジタルとリアル、販売と体験を高度に融合させた同店の取り組みは、日本の小売業にも多くの示唆を与えます。

 今回は、レベルシューズの実像をひもときながら、なぜ今「カテゴリー特化型店舗」が有効なのか、そして日本の小売は何を学ぶべきかを考えていきます。

本記事から学べる3つのポイント

  • カテゴリー特化戦略の可能性:総合型から専門型への転換は、商品知識の深化とサービス品質の向上を可能とし、店舗を目的地化する
  • オムニチャネルの実現:単にECサイトを持つことではなく、デジタルとフィジカルが相互に補完し合う仕組みが重要
  • 付加価値サービスによる差別化:商品だけでなく、その周辺体験全体を設計することで、価格競争と一線を画す

著者プロフィール:郡司昇(ぐんじ・のぼる)

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20代で株式会社を作りドラッグストア経営。大手ココカラファインでドラッグストア・保険調剤薬局の販社統合プロジェクト後、EC事業会社社長として事業の黒字化を達成。同時に、全社顧客戦略であるマーケティング戦略を策定・実行。

現職は小売業のDXにおいての小売業・IT企業双方のアドバイザーとして、顧客体験向上による収益向上を支援。「日本オムニチャネル協会」シニアフェロー Nextリテール分科会リーダーなどを兼務する。

公式Webサイト:小売業へのIT活用アドバイザー 店舗のICT活用研究所 郡司昇

公式X:@otc_tyouzai、著書:『小売業の本質2025DX


世界最大の靴専門店が描く「次世代リテール体験」

 2024年に1億1100万人が訪れ、世界一の集客を誇ることで知られる商業施設「ドバイ・モール」(アラブ首長国連邦、UAE)の一角に、小売業界の新たなベンチマークとなる施設があります。

 2012年にオープンした「レベルシューズ」(Level Shoes)です。約9000平方メートルという圧倒的な店舗面積を誇り、世界最大の靴専門店として知られています。

世界一の集客を誇ることで知られる商業施設「ドバイ・モール」(筆者撮影)

 実際に店舗に行ってみたところ、その大きさとさまざまな内装やVMD(ビジュアルマーチャンダイジング、視覚的な販売戦略)の多様性に圧倒されました。

 この店舗は単に大きいだけでなく、カテゴリー特化型メガストアの理想形として、DXと顧客体験価値の融合を体現している存在といえます。

 レベルシューズを運営するのは、中東における高級品流通の最大手、シャルーブ・グループ(Chalhoub Group)です。レベルシューズは250以上のグローバルブランドを擁し、23のデザイナーブティックと6つのマルチブランドエリアで構成されています。

靴だけでなく「世界観」を売る カテゴリー特化メガストアの革新性

 レベルシューズが注目される理由は、その規模だけではありません。カテゴリー特化という戦略が、いかに顧客体験を深化させるかを実証している点にあります。

 店舗は「ラグジュアリー」「デザイナー」「トレンド」「スニーカーアベニュー」といったパビリオン形式で構成され、それぞれが独自の世界観を持っています。英国の建築デザイン事務所SHEDが手がけた空間設計は、月面を思わせる大理石の山々や、メタリックな壁面など、各パビリオンに劇的な個性を与えています。

 特筆すべきは「Presentedby x Level Shoes」というストリートウェア&スニーカーセクションです。スペイン・バルセロナを拠点とする建築事務所External Referenceがデザインを手掛けたこのエリアは、3Dプリント技術を活用した格子状の壁面構造が特徴で、スニーカーを斜めに陳列することで、複数の視点から商品を鑑賞できる仕組みとなっています。

3Dプリント技術を活用した格子状の壁面構造が特徴的。スニーカーを斜めに陳列し複数の視点から商品を鑑賞できる(Architonicより引用)

 床には足の動きに反応するインタラクティブなプロジェクションが施され、入口は巨大なスクリーンで覆われた漏斗型の構造が訪問者を迎えます。

床には足の動きに反応するインタラクティブなプロジェクションも施されている(Architonicより引用)
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