こうした理論を裏付けるように、服装という「非言語メッセージ」の選択を誤り、本題とは無関係なところで炎上を招いた事例が後を絶たない。
フジテレビ・港浩一社長:開いたままの「誠意のボタン」(2025年1月)
トラブル問題の会見において、港浩一社長のスーツの前ボタンが留められていなかったことが批判の的となった。登壇して謝罪コメントを述べる際も上着は「フルオープン」の状態。視聴者からは「まずは服装から正せ」という怒りの声が上がり、身だしなみの乱れがそのまま「トップとしての誠意の欠如」と見なされる結果となった。
スノーボード國母和宏選手:服装と態度が共鳴した瞬間(2010年)
2010年のバンクーバー五輪で、日本選手団の公式ウェアのズボンを「腰パン」で着崩した姿が批判を浴び、その後の会見で「チッ、うるせーな」という小声の毒づきと棒読みの謝罪。服装の乱れが態度の不遜さと結びつき、世論の猛反発を招いた典型例である。
米国の政治史を見ても、服装の持つ政治的影響力は絶大だ。2014年、バラク・オバマ元大統領がシリアへの対応を説明する会見で「薄いベージュ(タン)のスーツ」を着用した際、保守派から「テロ対策を語る場にふさわしくない」と批判を浴びた。地方遊説では労働者との連帯を示すために、野暮ったいジーンズを履き、それが「庶民派を演出しすぎだ」と酷評されたこともある。
ドナルド・トランプ大統領の「長い赤いネクタイ」も、自身の体格を大きく見せ、権威を誇示するための計算された戦術と言われている。また、ウクライナのゼレンスキー大統領が常に着用するミリタリー風の装いは、「私は今も戦っている」という強烈なアイデンティティの表明だとする見方もある。服は言葉以上に饒舌だ。つまり謝罪の場で「何を着るか」という問いは、単なるマナーの問題ではなく、聴衆の脳内に潜む「認知バイアス」との戦いとも言える。
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