これほどまでに「やってはいけない」の地雷が埋まり、細かなマナーが網の目のように張り巡らされていれば、何を選べばいいのか分からなくなるのも無理はない。専門家ですら意見が分かれるこの迷宮で、一分一秒を争う経営層が立ち往生する時間は残されていない。
そんな時、最も賢明で確実な策は、独自のこだわりを一度捨て、すでに成功を収めた先例をそのまま「型」として模倣することだ。
例えば、男性ならKDDIの高橋誠前社長。2022年の通信障害という極限の状況下で行われた会見で、自らを誇示することのない装いを選んだ。清潔感に溢れ、それでいて主張を排した彼のスタイルは、発する言葉の誠実さを濁らせることなく世間に届けた。
女性であれば、DeNAの南場智子会長。彼女の謝罪会見の場での余計な装飾を削ぎ落とした姿は、お手本だと考える。2016年12月、キュレーションサイト問題に関する記者会見で、守安功社長とともに壇上に立った南場会長の装いは過度な演出を排した姿勢そのものだった。
黒に近い濃紺のシンプルなスーツに、白のインナー。アクセサリーは控えめな銀色で統一され、メイクも色味を抑えたナチュラルなトーンでまとめられていた。説明責任を果たす場にふさわしい、抑制された表現として機能していたと感じる。
装いは想像以上に多くを語る。特に謝罪会見という場では、その力が露わになる。論理的に選ばれた服装は、意図を精密に伝える手段になりうる。つまり、謝罪会見の場で有効な戦略とは、「誤解されない外見」を心がけること。内容を際立たせたいなら、まず外見から雑音を消す。過剰な主張を削ぎ落とし、実績ある「型」に倣う。
謝罪の場における装いとは、「身だしなみ」ではない。「コミュニケーション戦略」だ。
「貧乏人の食べ物だ」 “スープの巨人”キャンベル社が防げなかった「顧客蔑視」の末路
アサヒ、アスクルに学ぶ サイバー攻撃後に「信頼を落とさない会社」がやっていること
サントリー新浪前会長は、なぜ「無罪推定」の段階で辞任したのか?
日テレの「何も話さない」会見は必要だった? 国分太一氏降板に見る企業のリスク判断軸
フジテレビの「3つの判断ミス」 信頼回復への新セオリー
時事通信社カメラマン「支持率下げてやる」騒動 社員の不適切発言を防ぐ方法は?
フジテレビの「ガバナンス不全」 日枝久氏の「影響力」の本質とは?Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング