ただし、これはサーモンの価値が低いという意味ではありません。むしろ逆です。サーモンは、生産から流通、品質管理までが高度に設計された、現代的な寿司ネタの代表格です。脂の安定感、安定した味、クセのなさ、調理のしやすさは、回転寿司やグローバル市場において圧倒的な強みを発揮しています。高級寿司店が扱わないからといって、寿司ネタとして劣っているわけではありません。
つまり、サーモンが高級寿司店に出てこない理由は、優劣の問題ではなく、TPOの問題です。江戸前寿司の文脈で評価されにくいだけであり、現代の寿司ビジネスや世界の寿司文化においては、欠かせない存在になっています。
このように寿司は一枚岩の文化ではありません。高級寿司、町寿司、回転寿司……それぞれが異なる価値観と役割を持ちながら共存しています。サーモンは、その中で最も現代的で、最もグローバルな寿司ネタの一つと言えるでしょう。
この記事は、『寿司ビジネス』(ながさき一生/クロスメディア・パブリッシング)に掲載された内容に、編集を加えて転載したものです。
ながさき 一生 1984年、新潟県糸魚川市にある「筒石」という漁村の漁師の家庭で生まれ育ち、家業を手伝いながら育つ。2007年に東京海洋大学を卒業後、築地市場の卸売企業に就職し、水産物流通の現場に携わる。その後、東京海洋大学大学院で魚のブランドや知的財産の研究を行い、2010年に修士課程を修了。
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