Amazonの組織学習で最も興味深いのは、JWO技術のBtoB転換です。自社のJWO店舗は全店閉鎖しながら、同じ技術を5カ国360カ所超のサードパーティ施設にBtoBで展開しています。スタジアム、空港、大学キャンパス、コンビニエンスストア、さらにはEV充電ステーションまで用途は広がっています。
加えて、北米の40超のAmazonフルフィルメントセンター(物流拠点)では、従業員向けの休憩室にもJWOが導入されています。自社の店舗からは外した技術を、自社の物流拠点では福利厚生の一環として使い続けているのです。
Amazonは2024年4月のニュースで、JWOの成果データを公表しています。NFLシアトル・シーホークスのホームスタジアムである「ルーメン・フィールド」では取引件数が85%、売り上げが112%増加しました。デラウェア・ノース社の店舗では20〜30%多くの顧客にサービスを提供できるように。ロンドンにあるExCel Market Expressでは、最も混雑する日に300%多くの顧客に対応でき、年間売り上げが56%増加しました。
筆者が2022年に体験したラガーディア空港のWHスミスも、JWO外販の一例です。開店7カ月後でも物珍しそうに見ている旅行者が大勢おり、Amazonアプリすら不要でクレジットカードだけで入店できる手軽さが注目を集めていました。
参考:待ち時間の解消だけではない、レジなし店舗「Amazon Go」の真の狙いとは?
Amazonは自社のニュースの中で「この技術の真価は、小型店舗で発揮される。厳選された品ぞろえの店舗こそ、ジャスト・ウォーク・アウトの未来であると確信している」と述べています。
言い換えると、レジ作業にかかる時間が来店客数のボトルネックになる立地と品ぞろえの店舗で、最も効果的な技術なのです。乗車・搭乗時間までの短時間にレジまで済ませる必要がある電車のホームや空港の売店、混雑時に回転率が売り上げを直接左右するスタジアムの売店が、まさにこの条件に合致します。
自社の大型スーパーマーケットでは費用対効果が合わなかった技術が、小型・高回転の店舗では劇的な効果を発揮する。「技術そのものの否定」ではなく「使う場所の変更」という判断が、Amazonの学習サイクルの核心です。
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