デジタル技術を用いて業務改善を目指すDXの必要性が叫ばれて久しい。しかし、ちまたには、形ばかりの残念なDX「がっかりDX」であふれている。とりわけ、人手不足が深刻な小売業でDXを成功させるには、どうすればいいのか。長年、小売業のDX支援を手掛けてきた郡司昇氏が解説する。
前回は、レジなし店舗「Amazon Go」とスーパーマーケット「Amazon Fresh」の撤退の要因について解説しました。
後編では視点を技術から組織に移します。
「Amazon Books」(2015年開業、2022年閉鎖)、「Amazon Style」(2022年開業、2023年閉鎖)を含む実店舗からの相次ぐ撤退は、一見“失敗”のように見えます。しかし、その裏でAmazon.comは、着実に、小売事業の拡大を見据えているのです。
Amazonは店舗閉鎖などを公式ブログや決算説明会、プレスリリースで自ら開示し、撤退の経緯とその後の投資方針を同時に示しています。今回はそれらのデータと、筆者がこれまで体験してきた“現場”の情報から、Amazonが実験から何を学び、撤退をどう次の投資に変えていく方針なのか、分析します。
20代で株式会社を作りドラッグストア経営。大手ココカラファインでドラッグストア・保険調剤薬局の販社統合プロジェクト後、EC事業会社社長として事業の黒字化を達成。同時に、全社顧客戦略であるマーケティング戦略を策定・実行。
現職は小売業のDXにおいての小売業・IT企業双方のアドバイザーとして、顧客体験向上による収益向上を支援。「日本オムニチャネル協会」シニアフェロー Nextリテール分科会リーダーなどを兼務する。
公式Webサイト:小売業へのIT活用アドバイザー 店舗のICT活用研究所 郡司昇
公式X:@otc_tyouzai、著書:『小売業の本質2025DX』
前編で述べた通り、Amazon Goで導入しているレジを通さずに店を出るだけで自動決済される「Just Walk Outテクノロジー」(以下、JWO)は、レジ待ちの時間ロス、不公平感、接遇不満という3つの顧客不満を構造的に消し去りました。同時に、オフラインの購買行動データを取得可能にしました。
ここで着目すべきは、データの質です。
Amazon Goは客が普段使っているAmazonアプリで入店します。つまり、オンラインのAmazon.comアカウントでオフラインの買い物をすることになるのです。これにより、同一アカウントでのオンラインとオフラインの購買商品のギャップがデータ化されます。オンラインではリピート購入が多いが実店舗ではトライアル購入が多い、といった行動の違いも可視化できたのです。
オンライン中心に小売業を展開してきたAmazonが、オフライン顧客行動の最適化に取り組む挑戦こそが、Amazon GoとJWOの本質だと筆者は考えます。レジをなくすことは手段であり、目的ではない。この認識が、以降のAmazonの意思決定を理解する鍵になります。
レジなし店舗「Amazon Go」撤退が、「失敗」ではないこれだけの理由
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