Amazon実店舗を時系列で振り返ると、各撤退が次の展開に接続していることが分かります。
Amazon Books(2015年開業、2022年閉鎖)では、Kindleの読書データを生かした革新的な陳列を試みました。店舗に行ってみると「3日以内に読み切る人が多い本」など従来の書店では考えもつかなかったコーナーがありました。これは、読書状況がデータ化されるAmazonの電子書籍Kindleの読書体験データがあるからこそできることです。
しかし物理的な棚のパーソナライズには限界がありました。この学びは、アパレル店「Amazon Style」やAIレジカートの「Amazon Dash Cart」における「個々の顧客に直接届けるパーソナライズ」の方向性に引き継がれました。棚を共有する書店という形態ではなく、試着室やカートのタブレットといった個別の接点で、パーソナライズを試みる方向に進みました。
参考:OMO時代の書店革命 Amazon Booksの挑戦とコミュニティ型書店の躍進
Amazon Go(2018年開業、2026年閉鎖)では、コンビニ業態でJWOの有効性を確認しました。常にハード・ソフトのアップデートはされていましたが、品ぞろえの弱さから出店拡大に限界がありました。大型店舗のAmazon Freshに技術を拡大しましたが、前回述べた通り、スーパーマーケットとしての競争力不足が露呈しました。
Amazon Fresh店舗ではJWOをDash Cartに段階的に切り替える実験を実施。Dash Cartの方が売り上げ・満足度の両面で優れているというデータを得ました。
Amazon Style(2022年開業、2023年閉鎖)では、わずか2店舗の段階で「慎重に検討した結果、オンラインのファッション体験に集中する」と発表しました。仮説検証のスピードという点で最も鮮やかな撤退でした。
注目すべきは、どの撤退にも「次の一手」があることです。BooksやStyleの閉鎖はオンライン体験の強化に、Freshの失敗は同社の別ブランドで、45年の歴史を持つオーガニック系食品スーパー「Whole Foods」への集中投資と大型新業態の準備に、それぞれ接続しています。
つまり撤退は突然の判断ではなく、段階的な検証の結論なのです。
撤退と投資をセットで、常に新しい挑戦を繰り返しているのがAmazonという企業の凄さです。今回もAmazonは、閉鎖発表と同時に「Amazon Grocery」という新ブランドのテスト店舗をシカゴで展開中であること、ペンシルベニア州プリマスミーティングのWhole Foods内で「ストア・イン・ストア」形式の実験を行っていることを公表しました。Go、Freshの撤退の裏で、すでに次の実験が始まっているのです。
レジなし店舗「Amazon Go」撤退が、「失敗」ではないこれだけの理由
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