そのExcel、AIには読めていない集中連載「AIと人間の境界線」(2/2 ページ)

» 2026年03月02日 08時00分 公開
[斎藤健二ITmedia]
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AIが正しく読める文書になっているか

 2026年2月にAnthropic社(米国)が発表したClaude Opus 4.6は、この問題を大幅に改善した。100万トークン中に隠した情報を抽出するベンチマークで、先行モデルの18.5%から76%へと精度が跳ね上がった。「全部突っ込んでも、ちゃんと読める」という状態が、初めて現実のものになりつつある。

 しかし、クレディセゾンが社内で配布した「AIにやさしいデータ設計ノート」を見ると、技術の進化とは別の課題が浮かび上がる。セル結合は行わない。「同上」を使わない。色・罫線に意味を持たせない。1セル=1つの意味とする。記号にはテキストで説明を加える。

AIが誤解しないデータとは……(出典:ゲッティイメージズ)

 これらは、RAGやコンテキストウィンドウの大小とは関係のない話だ。構造的に壊れたデータは、AIには正しく読み取れない。その事実は、技術がいかに進化しても変わらない。

 RAGが必要か不要かという議論は、そもそもの問いの立て方が間違っている。本来、先に問うべきは「AIが正しく読める文書になっているか」である。委員会が遺伝子の名前を変えてExcelに対処したように、多くの組織はデータの設計を後回しにしたまま技術の進化に答えを委ねている。

 AIにやさしいデータとは、AIが誤解しないデータのことだ。コンテキストウィンドウがいかに広がろうとも、この問いだけは人間が答えなければならない。

集中連載「AIと人間の境界線」:

第1回:AIは若者の武器か? データが示した“逆の答え” 

第2回:AIを使うほど、チェックできなくなる 「監督のパラドックス」が示す危機

第3回:そのExcel、AIには読めていない 今回はこちら

第4回:採用AIという「見えない裁判官」 その判定に理由はあるのか


筆者プロフィール:斎藤健二

金融・Fintechジャーナリスト。2000年よりWebメディア運営に従事し、アイティメディア社にて複数媒体の創刊編集長を務めたほか、ビジネスメディアやねとらぼなどの創刊に携わる。2023年に独立し、ネット証券やネット銀行、仮想通貨業界などのネット金融のほか、Fintech業界の取材を続けている。


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