2026年2月にAnthropic社(米国)が発表したClaude Opus 4.6は、この問題を大幅に改善した。100万トークン中に隠した情報を抽出するベンチマークで、先行モデルの18.5%から76%へと精度が跳ね上がった。「全部突っ込んでも、ちゃんと読める」という状態が、初めて現実のものになりつつある。
しかし、クレディセゾンが社内で配布した「AIにやさしいデータ設計ノート」を見ると、技術の進化とは別の課題が浮かび上がる。セル結合は行わない。「同上」を使わない。色・罫線に意味を持たせない。1セル=1つの意味とする。記号にはテキストで説明を加える。
これらは、RAGやコンテキストウィンドウの大小とは関係のない話だ。構造的に壊れたデータは、AIには正しく読み取れない。その事実は、技術がいかに進化しても変わらない。
RAGが必要か不要かという議論は、そもそもの問いの立て方が間違っている。本来、先に問うべきは「AIが正しく読める文書になっているか」である。委員会が遺伝子の名前を変えてExcelに対処したように、多くの組織はデータの設計を後回しにしたまま技術の進化に答えを委ねている。
AIにやさしいデータとは、AIが誤解しないデータのことだ。コンテキストウィンドウがいかに広がろうとも、この問いだけは人間が答えなければならない。
第2回:AIを使うほど、チェックできなくなる 「監督のパラドックス」が示す危機
第3回:そのExcel、AIには読めていない 今回はこちら
第4回:採用AIという「見えない裁判官」 その判定に理由はあるのか
金融・Fintechジャーナリスト。2000年よりWebメディア運営に従事し、アイティメディア社にて複数媒体の創刊編集長を務めたほか、ビジネスメディアやねとらぼなどの創刊に携わる。2023年に独立し、ネット証券やネット銀行、仮想通貨業界などのネット金融のほか、Fintech業界の取材を続けている。
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