第1回:AIは若者の武器か? データが示した“逆の答え”今回はこちら
第2回:AIを使うほど、チェックできなくなる 「監督のパラドックス」が示す危機
第3回:そのExcel、AIには読めていない
第4回:採用AIという「見えない裁判官」 その判定に理由はあるのか
2009年6月1日の深夜、エールフランス447便はブラジル沖の大西洋に墜落し、228人全員が死亡した。事故調査委員会が特定した原因の一つが「オートメーションバイアス」だった。自動操縦を過信したことで、乗員の判断が鈍った。警告サインは出ていたが、誰もそれを信じなかった。
しかし、この悲劇にはもう一つの側面がある。航空安全の研究者たちが繰り返し確認してきた事実だ。ベテランパイロットほど、自動操縦の異常や誤作動に気付きやすい。経験の浅い乗員がシステムのアラームを見落とす場面で、熟練者は「何かがおかしい」という違和感を先に感じ取る。経験が、自動化へのむやみな依存を防ぐ。
これはAIの話ではない――。そう言いたいところだが、全く同じ構造が、いまデジタルの世界で再現されようとしている。
「若者はAIを使いこなし、シニアは取り残される」。デジタルネイティブという言葉がもてはやされて久しい。これが世間の常識だ。データも、一見それを支持する。EUの統計(2025年)によると、16〜24歳の生成AI利用率は63.8%で、16〜74歳全体の32.7%の約2倍に達している。
だが、それは幻想だ。
「使っている」ことと「使いこなしている」ことは、まったく別の話である。
その決定的な証拠は、大規模な実証研究から示された。ウトレヒト大学の経済学者シモーネ・ダニオッティらが2026年に『Science』誌に発表した研究では、世界最大級の開発プラットフォームGitHubにおける3000万件超のコードコミットを分析し、衝撃的な事実を明らかにした。
AIをより多く使っているのは、若手開発者だ。コードの37%がAIによって生成されている。経験豊富なシニア開発者は、27%にとどまる。ところが、生産性向上の恩恵を受けたのは、ほぼシニア開発者だけだった。「初心者はほとんど恩恵を受けていない」と研究の代表者は述べている。AIはスキル格差を縮めるどころか、むしろ拡大させていた。
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