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求人は4倍、離職率“半減”、働く意欲は8割超に 「イトーキ滋賀工場」の“壁を壊す”空間戦略とは?(2/2 ページ)

» 2026年03月23日 07時00分 公開
[篠原成己ITmedia]
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「家具ではなく働き方を提供」 社長が語る次世代工場の構想

 ITOKI DESIGN HOUSE SHIGAでは、イトーキと外部パートナーの共創も促進したい考えだ。イトーキが培ってきた開発・製造の知見と、外部パートナーの専門性やアイデアが交わることで、価値を生み続ける場を用意した。

 同社はリニューアルを通じて、滋賀工場の役割を変えようとしている。同工場はこれまで「製品をつくる場所」としての役割を担ってきた。リニューアルを通じて、人と情報が行き交い、共創が自然に生まれるモノづくり拠点へと進化させたことで、この事例を新しい地方工場オフィスの標準として広げていこうとしているのだ。

 湊氏は「今は、家具を売っているというよりは、新たな働き方を提供しているんです」と話す。

ITOKI DESIGN HOUSE SHIGAのコンセプト図(イトーキのWebサイトより)

データを活用し「社員の働き方」を可視化

 リニューアルにおける空間設計の特徴は、空間を一度整えて終えるのではなく、使い方をデータで捉え、改善を重ね続ける仕組みを組み込んだ点にある。ITOKI DESIGN HOUSE SHIGAでは、この考え方を具現化する取り組みとして「Data Trekking」を導入した。

「Data Trekking」図(イトーキのWebサイトより) 

 Data Trekkingとは、IoTセンサーなどを用いてオフィスの稼働状況と社員の働き方を可視化・分析するサービスだ。人の動きや空間の利用状況を可視化する位置情報データ、働きやすさやエンゲージメントを把握するサーベイデータ、レイアウトや用途を管理するスペースデータを組み合わせて分析する。

 これまで培ってきた経験や知見に、データを掛け合わせることで、感覚や印象に頼らない、より確かな根拠に基づく改善サイクルを実現しているのだ。分析結果をもとに、課題の把握から小規模なレイアウト変更、運用改善までを継続的に実施している。

 床や壁、展示什器にはグリッドや目盛りといった意匠を取り入れ、日常の中で製品や空間のスケール感を、自然と意識できる仕掛けを設えている。モノづくりの現場ならではの寸法感覚や、精度への意識を空間全体で共有するようにした。

「働く環境の再設計」が競争力を引き上げる

 ITOKI DESIGN HOUSE SHIGAは、社内向けの取り組みにとどまらず、法人向けの工場・オフィス見学も積極的に受け入れている。製造現場とオフィスを一体とした空間を体験してもらうことで、製造業における働く環境の在り方や、工場オフィスの可能性についての対話を生み出していく狙いだ。

 座席を用意して出社を強要しても、イノベーションは起きない。イトーキ滋賀工場の事例が示すのは、空間設計によって部門間の壁を取り払うことで、オフィスそのものを「競争力の源泉」に変える発想だ。「オフィスはコストか、投資か」への答えは、経営トップが働く環境の再定義にどこまで本気で踏み込めるかにかかっている。

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