「オバケ調査」で事故物件の価値を回復 7000室の現場経験から生まれた”家賃値下げに頼らない”再生モデル(1/4 ページ)

» 2026年04月13日 07時30分 公開
[スギモトアイITmedia]

 「オバケ調査で、事故物件の価値を戻す」。奇抜に聞こえるこの取り組みだが、不動産業界が長年抱えてきた課題に対する一つの答えだ。

 「入居者が事故物件に対して感じる気持ち悪さは、心理的瑕疵(かし)に他ならない」――そう話すのは、カチモード(東京都新宿区)代表の児玉和俊氏だ。

カチモード代表の児玉和俊氏(画像:編集部撮影)

 児玉氏は不動産会社での15年の経験を基に、2022年に同社を起業。そこから「オバケ調査」というサービスを通じて、人々が事故物件に感じる不気味さの正体を解き明かし、物件価値の回復に取り組んできた。事故物件とは、過去に室内で他殺、自殺、火災などの事件・事故が発生し、前の居住者が亡くなった物件を指す。

 事故物件の場合、入居者確保のために家賃を2〜3割引き下げるケースが一般的で、空室期間が最大3年近くに及ぶことも珍しくないという。「家賃を下げても入居者が確保できない」という状況で、どのように不動産の価値を回復させているのか。

オバケ調査とは?

 オバケ調査は、事故物件を所有するオーナーや管理会社からの依頼を受けて始まる。まずは彼らから状況を聞き取り、該当物件の室内や周辺環境を調査する。

 具体的には、事故の状況や特殊清掃の内容、室内の状態を確認し、賃貸物件として貸し出し可能かどうかを見極める。併せて、郵便受けやゴミ置き場といった共用部分に加え、周辺環境にも問題がないかを確認する。

 例えば、雑音を発生させる可能性がある送電線の有無や、周辺機器に異常な音や乱れを生じさせる可能性があるアマチュア無線の使用状況、不審者の有無などを調査対象としている。事故物件の場合、室内以外の要因で入居者がマイナスの印象を抱くこともあるため、物件全体の状態を把握する。

 その後、児玉氏が当該物件に午後10時から午前6時まで1人で滞在する。ヒアリングで不思議な現象の報告があった場合は、一晩かけて原因を探る。調査では、ビデオカメラによる映像記録やICレコーダーによる音声記録に加え、電磁波やサーモグラフィー、風力、温度・湿度、大気圧、騒音の8項目で測定する。

使用機材(画像:カチモード提供)

 この調査スタイルは、あるテレビ番組で見た英国の城の調査から着想を得た。「番組では、英国でオバケが出ると有名な城を調査する会社が紹介されていました。その会社のやり方を参考にしながら、大学の物理学の教授に手法を相談して、調査方法を確立していきました」と児玉氏は説明する。

 機材の組み合わせで、人間の感覚では捉えられないものが見つかることもあるという。

 「現場では鳴っていない音をカメラ(のマイク)が拾っていたり、現場で聞こえていたはずの音がレコーダーに記録されていなかったりすることがありました。そのため、デジタル機材だけでなく、カセットテープといった音をそのまま記録できるアナログ機材も組み合わせながら調査を進めています」(児玉氏)

 当該物件に8時間滞在し、収集した音声や映像などのデータを社内で改めて確認し、異常が発生していないかを調べる。異常とされる音や映像についても、その多くは不動産の知見に基づいて説明できるという。例えば、建物内の木材や金属が温度や湿度の変化によって膨張・収縮することで「ギシギシ」「パキッ」と音が鳴る「家鳴り」であるケースも少なくない。

 こうした検証を踏まえ、異常が確認されなければ「異常なし」の証明書と調査報告書を発行する。一方、説明できない異常が確認された場合にはその旨をオーナーに報告し、今後の対応を協議するという流れだ。

 なぜ、オバケ調査というビジネスを始めようと思ったのか。その背景には、児玉氏が不動産会社で働いていた時に感じたモヤモヤがあった。

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