「オバケ調査」で事故物件の価値を回復 7000室の現場経験から生まれた”家賃値下げに頼らない”再生モデル(2/4 ページ)

» 2026年04月13日 07時30分 公開
[スギモトアイITmedia]

オバケ調査、どのようにして生まれた?

 2007年、27歳で不動産業界に足を踏み入れた児玉氏は、営業としてキャリアを積んでいった。契約や入居者対応、建物のメンテナンス、資産運用・相続、売買といった不動産運営における基本業務だけでなく、全国の不動産会社の業務効率化や新人教育を支援するコンサルタント職など幅広く経験。42歳でカチモードを創業するまでの15年間で、経験と知見を蓄積していった。

 不動産業務の中で、心に引っかかる仕事があった。それが、事故物件を抱えることになってしまったオーナーへの対応だ。事故物件となった賃貸物件は発生から3年間、売買は原則無期限で告知義務が生じる。マイナスイメージの払しょくは難しく、先述したように家賃を下げたとしても、簡単に部屋は埋まらない。

 事故物件を所有するオーナーは、部屋の清掃やリフォームが終わると、口をそろえてこう言う。

 「こんなに綺麗にしたんだから、家賃を落とさなくていいよね」

 今後の運用についてのこういった相談に、当時は先輩社員から教えられた「それは先の話で、今を乗り切りましょう」というセリフをそのまま伝えていた。その場をしのぐ術は身に付けたものの、最終的には家賃を下げる対応が一般的で、抜本的な解決につながる提案はできず、モヤモヤを感じていたという。

事故物件のその後の対応について、モヤモヤした感情を持っていたという(画像:ゲッティイメージズより)

 会社員時代の最後の2年間は、物件を管理する部門の責任者として「事故物件の対応」を経験した。その際、物件オーナーからの先述の問いに、「今の状況を乗り切りましょう」と精神論で答え続けることへの限界を感じたという。

 そこで、児玉氏が思いついたのが「調査」というアプローチだ。入居者が不安を感じる原因を突き止め、安心材料を示すことで不動産価値を回復させる。

 「”気持ち悪さ”は心理的瑕疵が大きい。それを解消できれば、事故物件となってしまった不動産の価値を再生できるのではないか」――その思いが、カチモード誕生につながった。

 カチモードの事業は大きく分類すると、不動産コンサル業に当たるが、メインは「オバケ調査」とした。個人として宅地建物取引士の資格を持ちながらも、法人としての宅地建物取引業免許はあえて取得しなかったという。この免許があれば、不動産の売買ビジネスを展開することも可能だが、オバケ調査で関係を築いた不動産オーナーが「物件の管理もカチモードに任せる」と言い出して、既存の管理会社から切り替えるといった事態が発生しないように対策した。

 「売ったり買ったりしない立場を明確にすることで、オーナーさんや管理会社さんと団結したかったんです」と児玉氏は話す。

カチモードが提供するサービス(画像:カチモード公式Webサイトより)

 「オバケ調査」というサービス名にもこだわりがある。「幽霊調査」や「心霊調査」では、怪しさが先に立ち、依頼者の心理的ハードルが上がってしまうと考えたのだ。

 また、配管や建物構造に起因する音など、不動産業界では「当たり前」の現象だとしても、入居者には"原因の分からない不気味な事象"として受け取られることも少なくない。それなら「不思議なことは全て『オバケ』としよう」という発想から、「オバケ調査」という名称が生まれた。

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