日立ソリューションズ(東京都品川区)は4月15日、貿易相手の安全保障リスクを確認・管理する業務にAIエージェントを適用して、審査時間を導入前から約60%短縮したと発表した。
この業務は「安全保障貿易管理」と呼ばれる取り組みの一環だ。軍事転用可能な製品や技術が安全保障リスクのある相手に渡らないように、国が設定した輸出制限や規制に対応する。
国際情勢の変化に伴って貿易ルールが複雑化し、規制内容が短期間で変わることも多い。より高度な輸出管理が求められる中、現場の負担が増大している。同社はこの課題を、AIエージェントでどのように解決したのか。
安全保障貿易管理の一例を挙げると、米国によるAI半導体の対中輸出規制や、中国が日本に対して行っている軍民両用品の輸出制限などが該当する。取引先がこうした制限に合致するかどうか確認する必要がある。
安全保障貿易管理には3つの課題がある。1つ目は、取引先情報や技術情報、関連法令、過去事例などが多言語かつ多様な情報ソースで存在するため、収集・整理に時間がかかる点。2つ目は、取引先の審査やリスク判断を標準化できず、担当者によって差異が出る点。3つ目は、判断の根拠や参考にした情報が残されず、ナレッジが蓄積されない点だ。
「従来はツールで対応できていましたが、輸出管理の幅が広がり、内容が深くなることで、現場では人の負担に依存する部分が増えています。そこをAIエージェントで補うことで、3つの課題を解決できます」――日立ソリューションズの庄谷圭多氏(産業イノベーション事業部 ビジネストランスフォーメーション本部 主任技師)はこう説明する。
同社は、2つの業務にAIエージェントを適用した。取引先の安全性を確認する「顧客審査業務」では、AIエージェントが公開情報や独自データベースを参照してレポートを作成する。人が最終判断に集中できるようにして、審査スピードの向上を支援する。
製品や技術が輸出規制の対象かどうか判断する「該非判定業務」では、関連する法令や規制リストをAIエージェントが照合する。不足している情報を洗い出してくれるため、判定漏れを防げると庄谷は説明する。
これらのAIエージェントは、米国のグループ企業が手掛けている年2000件以上のスクリーニングから得た知見を取り入れている。米Hitachi Solutions Americaによる試験利用では、審査工程の半分以上をAIエージェントが担い、審査時間を導入前から約60%短縮できたという。
今回のAIエージェントは、京セラや日本ガイシなど350社以上が使う同社の「安全保障貿易管理ソリューション」の追加機能として販売する。対応業務の拡大、ドキュメントや画像を読み込んで理解するマルチモーダル化も視野に入れている。複雑化する貿易業務において、AIエージェントの活用は課題解決策の一つになれるのか。
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