他責志向が強い人のそばには、決まって余分な仕事を引き受けている真面目な社員がいる。
心理学の用語でいえば「イネーブラー(支え手・助長者)」と呼ばれる存在だ。彼らは「自分がやらなければ仕事が止まる」という責任感から、他責志向の人間が放り出した仕事や、ミスの後始末を黙って引き受ける。
イネーブラーの犠牲によって仕事が円滑に回り、上司や会社が「うまくいっている」と誤認すると、他責タイプを放置することになり、職場の士気は下がる。やがて、優秀で真面目な社員から順に辞めていく。冒頭で紹介した「甚大な損失」の正体は、単なる生産性の低下ではなく、「健全な人材の流出と組織のモラル崩壊」によるものだ。
他責志向が強い人と対峙するには「事実に基づいた戦略的アサーティブネス」と「『責任感』の再定義」による「戦略的放置の徹底」が重要である。
「事実に基づいた戦略的アサーティブネス」とは、事実と想定リスクを述べたうえで、解決策を提示し、合意できない場合における次の策(上司への報告など)を予告することだ。感情的にならず、論点を事実から逸らさないことがポイントである。
もしあなたが上司なら、他責志向が強い人に対して単なる叱責で済ませてはならない。前述した「事実に基づいた戦略的アサーティブネス」を徹底したフィードバックを心がけることで、組織の自浄作用を高められる。
真の「責任感」とは、他者の仕事を身代わりになってやることではなく「仕事を健全に回すこと」である。この「『責任感』の再定義」を行ったうえで、あえて助けず、問題を表面化させる勇気が必要だ。
「手を貸さないこと」は決して冷酷ではなく、相手に自立の機会を与える健全な距離感である。また、これらを適宜上司・人事へ報告することも忘れてはならない。
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