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配慮すればホワハラ、しなければパワハラ 管理職を悩ませる“新しい地雷”の正体働き方の見取り図(2/2 ページ)

» 2026年04月30日 07時00分 公開
[川上敬太郎ITmedia]
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ホワハラを防ぐマネジメントの分岐点

 ホワハラを恐れ、全てを逆にして「仕事から外さない」「責任ある仕事を任せる」「昇進させる」「仕事途中で切り上げさせない」といった方向に振り切ればよいかというと、無理強いされたと受け取られてパワハラに該当する恐れがあります。

 当然ながら、人それぞれに意思があります。部下が何を望んでいるのか、現在の状況や将来のキャリアを踏まえた上で何が最も望ましいのかを考慮せずに、上司の考えを一方的に押し付けてしまうと、ハラスメントは生じやすくなります。

 加害者による一方的な決めつけが、受け手には嫌がらせに感じられてズレが生じる。この構図はホワハラに限らず、あらゆるハラスメントにおいて共通です。

 では、上司がホワハラ加害者にならないようにするためには、何が必要なのでしょうか。最初に意識すべきなのは、部下の意思を丁寧に確認することです。「なるべく仕事したくない」「プライベートの充実を最優先したい」といった志向の部下であれば、負担軽減の配慮が裏目に出てホワハラが生じるケースは少ないように思います。

 しかし「早く仕事を覚えて一人前になりたい」「誰よりもハイパフォーマーになりたい」といった志向の部下に対して仕事の負荷がかからないような接し方一辺倒になると、配慮したつもりが空回りしてホワハラになってしまう可能性が高まります。

 とはいえ、長時間労働の是正が進められている現在の職場においては、本人が望むからといって無理をさせることが難しい面もあります。昭和の職場であれば徹夜も厭わず働くよう発破をかけるようなマネジメントが通用したかもしれませんが、心身の健康や豊かな生活との両立を目指す現代の価値観とは相いれません。

 いま求められているのは、短い勤務時間で成果を出すマネジメントです。部下の意思を把握し、個々に寄り添いながら時間内の密度を上げられるよう、最適な形で導くスキルが、上司には必要となります。

上司と部下に求められる「視点転換」

 ホワハラは、働き放題が許されていた時代のマネジメントからの転換期に生じる、葛藤の表れなのかもしれません。会社としては、上司に求められるマネジメントの難易度が高まっていると認識し、支援する必要があります。

 一方、ホワハラを受けた社員側にも視点の転換が求められます。ホワハラを感じる社員は仕事に対して前向きな人が多いと考えられますが、マネジメントの難易度が上がっている状況を踏まえると、上司もまた成長の途上です。それならば、キャリア形成を会社に委ねるスタンスから脱却して、能動的に動くのが解決への近道です。

 パワハラの場合、そもそも配慮がありません。人事部門に相談するなどして対抗措置をとっても、加害者が自らの過ちを認めず言動が修正されないこともあり得ます。しかし、ホワハラの場合は、加害者側に配慮する気持ちがあります。

 上司に意思を伝えることで、改善が図れる可能性があります。「上司の指示だから仕方ない」と諦めず「お心遣いはうれしいのですが、私は一日も早く仕事を覚えたいと思っています」などと伝えれば、上司は過剰な配慮をしていたと気付き、方向修正しやすくなります。

 それでも改善が見込めない場合は、自ら別の仕事を取りにいったり、新しい仕事を作り出したりする方法もあります。あるいは、いまの職場は生活費を得るためのライスワークだと割り切って「静かな退職」のように最低限の役割だけはきっちりと果たし、副業に挑戦するといった方法もあります。

 転職も選択肢に入ります。ホワハラにどう向き合い、どうしたいのか。自身の意思を確認し、示すことはキャリア自律の第一歩です。

photo03 ホワハラを受けた社員側にも視点の転換が求められる(提供:ゲッティイメージズ)

 パワハラやセクシャルハラスメント(セクハラ)、カスタマーハラスメント(カスハラ)など、現代社会にはハラスメントが多く存在しています。ただ、ホワハラについては他のハラスメントとは性質が異なります。

 セクハラやカスハラなど他のハラスメントは、基本的に加害者側の被害者に対する配慮不足・欠如が嫌がらせにつながっています。しかし、ホワハラには配慮があることが前提で、根本的な原因は求められているマネジメントに対してスキルが未熟で、配慮の仕方を勘違いしている点にあります。

 ホワハラをハラスメントの一つと見なしてよいのか疑問が残ります。ハラスメント扱いすることで、かえって解決策の焦点が曖昧(あいまい)になります。

 課題がハラスメントなのであれば、会社は被害者側に寄り添います。しかし、ホワハラの場合には、マネジメントスキルの向上支援に取り組むなど、上司側に寄り添う姿勢も求められるのではないでしょうか。

著者プロフィール:川上敬太郎(かわかみ・けいたろう)

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ワークスタイル研究家。1973年三重県津市生まれ。愛知大学文学部卒業後、大手人材サービス企業の事業責任者、業界専門誌『月刊人材ビジネス』営業推進部部長 兼 編集委員の他、経営企画・人事・広報部門等の役員・管理職を歴任。所長として立ち上げた調査機関『しゅふJOB総研』では、仕事と家庭の両立を希望する主婦・主夫層を中心にのべ5万人以上の声を調査。レポートは300本を超える。雇用労働分野に20年以上携わり、厚生労働省委託事業検討会委員等も務める。NHK「あさイチ」「クローズアップ現代」他メディア出演多数。

現在は、『人材サービスの公益的発展を考える会』主宰、『ヒトラボ』編集長、しゅふJOB総研 研究顧問、すばる審査評価機構 非常勤監査役の他、執筆、講演、広報ブランディングアドバイザリー等に従事。日本労務学会員。男女の双子を含む4児の父で兼業主夫。


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