「それって、仕事をするなって意味ですか?」
管理職になりたてのころ、社員から激怒されたことがありました。体調を崩して休みがちだったため「しばらくは無理せず休んではどうか」と伝えた際に返ってきた言葉です。
配慮したつもりだっただけに、反応のギャップにあぜんとしました。当初は社員が何に怒っているのか理解できずショックでしたが、冷静に振り返ると、受け手の事情はまったく異なっていました。
仕事をしたくても体調がすぐれず、いら立ちや不安を感じている。そんな状況で休むよう促されたとしたら「仕事の機会を奪われるのではないか」「自分は必要とされていないのではないか」と感じても不思議ではありません。
過剰な配慮で、部下の仕事の機会を奪うような行為は「ホワイトハラスメント」(ホワハラ)と呼ばれます。働き方改革が進められ、長時間労働やパワーハラスメント(パワハラ)などへの社会の目が厳しくなっている昨今、配慮しないとパワハラと言われ、配慮すればホワハラと言われてしまうジレンマの中で、上司はどう振る舞えばよいのでしょうか。
ワークスタイル研究家/しゅふJOB総研 研究顧問/4児の父・兼業主夫
愛知大学文学部卒業。雇用労働分野に20年以上携わり、人材サービス企業、業界専門誌『月刊人材ビジネス』他で事業責任者・経営企画・人事・広報部門等の役員・管理職を歴任。
所長として立ち上げた調査機関『しゅふJOB総研』では、仕事と家庭の両立を希望する主婦・主夫層を中心にのべ5万人以上の声をレポート。
NHK「あさイチ」「クローズアップ現代」他メディア出演多数。
マイナビの調査によると、職場でホワハラを経験した人は13.6%でした。また、ホワハラ経験者の71.4%が1年以内に転職したいと考えています。
実際にホワハラだと感じた内容として以下のような声が挙がっています。
「責任のある仕事を一切任せてもらえず、残業は厳禁だから早く帰ってと毎日促されることに虚しさを覚えた」
「健康診断や出産の面で昇進すると大変だから今回は見送るといった通達があった」
「仕事が途中にもかかわらず、定時だから帰るよう言われた」
「仕事から外す」「責任ある仕事を任せない」「昇進させない」「仕事途中で切り上げさせる」といった行為は、悪意を持って仕事を干しているようにも映ります。
ただ、ホワハラとは基本的に過剰な配慮が引き起こすものです。わざと仕事を与えないような場合については、配慮自体がありません。配慮に見せかけているだけのケースも含め、意図的であれば優越的な立場を利用したパワハラの一種と見なせます。
一方で、悪意があるわけではなく、相手にとって望ましいだろうと配慮したつもりなのに、受け手である部下や後輩に不快感を与えてしまっているとしたらホワハラです。冒頭で紹介した私自身の失敗経験も該当すると言えるでしょう。
ただ、相手への配慮があろうがなかろうが、結果的に部下や後輩が不満や不安を覚えてしまうのは好ましい状況とは言えません。背景に見え隠れするのは、マネジメントスキルの未熟さです。
マネジメントの目的は、管轄する組織の力を結集し、成果を最大化させることにあります。その観点に立って考えると「仕事から外す」「責任ある仕事を任せない」「昇進させない」「仕事途中で切り上げさせる」といった行為は、組織に負の影響を及ぼしかねません。
例えば「仕事から外す」ことをすれば人手が足りなくなり、他の社員にしわ寄せが生じます。「責任ある仕事を任せない」場合、社員は成長機会を奪われて能力の停滞を招きます。「昇進させない」は、社員の可能性を摘み取り、組織の拡張を阻害します。また「仕事途中で切り上げさせる」は、その分成果が減少し、生産性の向上を妨げることになります。
部下が仕事に前向きな姿勢を持っている場合、これらの対応をされると「自分は組織に必要とされていないのではないか」とネガティブに受け取ってしまうことも起こり得ます。負担を軽くすれば喜ぶはずという勘違いした配慮が裏目に出て、逆に部下のモチベーションを下げ、成果がますます上がらなくなってしまうのです。
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