この記事は、山口拓朗氏の著書『正しい答えを導く質問力』(かんき出版、2025年)に、かんき出版による加筆と、ITmedia ビジネスオンラインによる編集を加えて転載したものです(無断転載禁止)。
ビジネスの現場において「何をどう質問するか」は成果や評価を大きく左右する重要なスキルだ。一方で、質問するのに勇気がいるという人は、案外多いのではないだろうか。
しかし、他人に気を使い過ぎるあまり、分からないことを質問せずに放置しておくのは本末転倒だ。インタビュアーで言語化の専門家である山口拓朗氏は「一番大事なのは『なんとなく』で質問しないこと」だと話す。
相手からの評価を下げる「悪しき質問」と、相手が気持ちよく答えてくれる「良い質問」の違いはどこにあるのか。3つの質問テクニックを解説する。
質問の中には、素朴で真面目に見えるものの、本質的な学びや成長につながらない「悪しき質問」が存在します。その典型が「むやみに唯一の正解を求める質問」です。
例えば、こんな質問です。
「1日に何時間働くのが理想でしょうか?」
一見、意欲的な質問のように思えますが、これは実はとても浅い問いです。なぜなら「何時間働くのが理想か」は、業種、職種、年齢、体力、仕事の質、成果の定義、そして個人のライフスタイルや体質によって、いくらでも変わるからです。
そもそも「働いた時間=成果」ではありません。集中力が高く、2時間で成果を出す人もいれば、ダラダラ8時間働いても何も進まない人もいます。
また、体調を崩しやすい人に「毎日10時間働け」というのは無理がありますし、逆に情熱をもって働いている人にとっては「5時間でやめましょう」という方が不自然かもしれません。
正解を求めたくなる気持ちは分かりますが、このような一発で正解が出ることを期待した質問には、多かれ少なかれ「他責」(失敗や問題を自分以外に押しつける思考)と「見通しの甘さ」が潜んでいます。
この質問者は「働く時間は8時間がベストです」と言われたら、その通りに実行するのでしょうか。だとしたら、いわゆる「指示待ち人間」と大差ありません。
自分の状況を深く考えず、他人から「これが正解」と教えてもらうことで、できるだけ悩まず、すぐに動きたい。これがまさに「悪しき質問」の正体であり、思考停止の一歩手前とも言える危うい状態です。
悪しき質問になっていないか、自分が発する問いにも正しく疑問を持ちましょう。
個人的な興味や関心に基づいて質問したいときや、少し微妙なニュアンスを含む内容について尋ねたいときに使えるのが「個人的にお聞きしたいのですが」という前置きフレーズです。
このフレーズには、主に次の3つの意図が込められています。
以下に、いくつか例を挙げます。
例えば、会議中に「この点、少し気になるな」と思ったものの、公の場で質問するには、私的な関心に寄りすぎている気がする……。そんなときは、会議後に相手をつかまえてこう切り出しましょう。
「個人的にお聞きしたいのですが、あのスケジュールの件はA社への配慮が背景にあるのでしょうか?」
このように前置きフレーズを添えることで、相手は「詮索されている」「責められている」とは感じず、あくまで内々の会話として安心して応じてくれるでしょう。
会議や研修の質疑応答の場面で「失礼に当たらないよう配慮していること」をにじませたいときは、このように尋ねます。
「個人的にお聞きしたいのですが、もし差し支えなければ、B案を外した理由をもう少し具体的に教えていただけますか?」
「個人的にお聞きしたいのですが」という前置きフレーズが「これは全体に関係のある質問ではないかもしれませんが」というクッション効果を発揮するため、場の空気を壊すことがありません。
「ちょっと個人的にお聞きしたいのですが、ご家族の反応はどうでしたか?」
「個人的な興味なんですが、休日はどんなふうに過ごすことが多いですか?」
信頼関係が浅い段階でも、これらのフレーズを用いることで、相手の「心の扉」を軽くノックすることができます。
ただし、「個人的にお聞きしたいのですが」というフレーズを使う際には、その内容や聞き方にも注意が必要です。
「個人的に聞きたいのですが、加藤さんのプレゼン、正直どう思いました?」
このように相手の本音をダイレクトに聞こうとすると、相手に「詮索されている」「悪口の同意を求められている」といった警戒心を与えてしまう恐れがあります。
前置きをすれば何を聞いてもいいというわけではありません。相手との関係性、その場の空気、質問する意図などを勘案して、上手に使いましょう。
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