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P&G新CEOが就任初日にやったこと 徹底した「顧客主義」を貫くマーケティング革命Adobe Summit 2026(1/3 ページ)

» 2026年05月18日 09時30分 公開
[冨永裕子ITmedia]

 アドビの年次カンファレンスAdobe Summit 2026、2日目の基調講演のゲストとして、2026年1月に米Procter & Gamble(P&G)のCEOに就任したシャイレッシュ・ジェジュリカー氏が登場。同じ高校の卒業生同士という共通点を持つアドビ 会長兼CEOのシャンタヌ・ナラヤン氏と語り合った。

 マーケティング領域をけん引してきた両社は、AIの普及で大きく変化する消費者行動をどのように捉えているのか。世界を動かす2人の対話から、ビジネスの未来を解き明かすヒントが見えてきた。

本記事は米Adobe(以下、アドビ)が4月20日に米ラスベガスで開催したマーケター向け年次カンファレンス「Adobe Summit 2026」2日目の基調講演で、P&Gのシャイレッシュ・ジェジュリカーCEOとAdobeのシャンタヌ・ナラヤンCEOが対談した様子を、一部抜粋して紹介する。


AI 左:シャンタヌ・ナラヤン氏(Adobe 会長 兼 CEO)、右:シャイレッシュ・ジェジュリカー氏(Procter&Gamble 社長 兼 CEO)(提供:アドビ)

社長就任の初日に「消費者の自宅訪問」 顧客中心主義への熱い情熱

ナラヤンCEO: 今回のセッションの準備中に学んだことの一つに、P&Gの顧客中心主義があります。P&Gでは取締役会のメンバー全員が、P&G商品だけでなく、競合の商品を使っている消費者に、週に一度は直接会い、話を聞いていると聞きました。この顧客中心主義への情熱について、詳しく聞かせてください。

ジェジュリカーCEO: 私たちのビジネスのゴールは何か。突き詰めると、消費者のさまざまなニーズに応えることだと思います。

 私自身がこの仕事に見いだしているやりがいの一つに、消費者の自宅訪問があります。この役職に就いた初日にも行きました。「コンシューマーファースト」のメッセージを、社内に伝えたかったからです。人々の生活環境に身を置くことで、消費者の意見を傾聴するだけでなく、消費者が語らない裏側も見えてくる。実際に何をしているかの観察は、多くの興味深い発見を得る力になります。

 私の好きなP&Gブランドの一つ「Dawn Powerwash」(スプレータイプの食器用洗剤)の例を紹介しましょう。この商品が生まれた背景は面白いんです。何年もの間、私たちは消費者がシンクに水をためて食器を洗うことを前提に、商品を開発してきたのですが、あるとき観察対象を「食器を洗う様子」から「一日の過ごし方」に変えてみたのです。すると、準備から、実際の食事、後片付けまでの流れ全体が見えてきました。

 そこで気付いたのは、消費者は「まとめ洗い」ではなく「その都度洗い」をしていること。使った食器が汚れるたびに洗う、それが実際の習慣だったのです。この発見から生まれたのが、スプレーした泡で汚れを落とすDawn Powerwashです。

ナラヤンCEO: 問題解決のためのインサイトを得る機会になっていると。私は、あなたがCEOに就任したばかりのころに「最も重視することは何ですか?」と尋ねました。返ってきた3つの答えの1つに、マーケティングがありました。

ジェジュリカーCEO: 今の時代、最も重要なことです。社員にも「マーケターとして生きる時代を一つ選べるとしたら、今ほど面白い時代はない」と話しています。

 1930年代の初め、P&Gは「ソープオペラ」(ロングランのラジオ、ドラマシリーズ)という全く新しいマーケティング手法を生み出しました。そして、その後も私たちはテレビというメディアの活用を通じて、多くの消費者にリーチする手法を発展させてきました。

 今の世代には「未来のソープオペラ」を創造するチャンスがあります。もちろん全く異なるものになるでしょうが、マーケティングの在り方を再定義する機会を手にしているのだと考えています。

 さらに、構造的変化も進行しています。メディアの細分化や人口動態の変化が進む中でも、消費者からの注目を集めなくてはならない。私自身はブランドマネジャーとしてのキャリアに誇りを持っていますが、今の時代に「ブランドを一から構築せよ」と言われたらどうか。普遍的原則は語れても、具体的な方法になると、また別の話だと感じています。

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