「ジョブ型の流行りに乗る気はなかった。会社の成長に本当に合った人事制度を作りたかった」──そう語るのは、カルビーの人見泰正・執行役員CHRO(最高人事責任者)だ。
同社は4月、約17年ぶりとなる人事制度の抜本的な刷新に踏み切った。改定の大きな特徴は、これまで分かれていた正社員と無期転換社員の等級体系の統合や、基本給の比率を従来から最大15%程度引き上げた点だ。
人手不足や国内市場の成熟、グローバル展開への加速といった経営課題を前に、欧米流のジョブ型雇用を取り入れる企業が増えている。しかし、同社が選択したのは、現場の声に耳を傾けながら、社員の地道な貢献を評価するための独自の制度作りだった。
2年間にわたる労使の対話から生まれた“カルビーならでは”の人事制度は、どのように作られたのか。人見氏と、人事戦略部の流郷紀子部長に話を聞いた。
新しい人事制度の検討が始まったのは2024年4月。2023年に江原信社長をトップとする新体制がスタートし、経営基盤の構築を進める中、次の成長戦略を発表する2026年4月のタイミングに照準を合わせて準備を進めてきた。
制度の改革で人事部門がこだわったのは、トップダウンによる制度の「押し付け」を避けることだった。人事部門は2年をかけて労働組合や従業員との協議・ヒアリングを重ねた。最初の1年間で大枠を決め、2年目で詳細を詰めていくスケジュールだった。
流郷氏は「そのプロセスは、決して平坦なものではなかった」と振り返る。
人事部門は当初、経営陣との対話をもとに、今後の成長戦略を見据えて「もっと挑戦する人」「自分の枠を超える人」を、求める人材像として掲げた。しかし、この「挑戦」という言葉を携えて全国の工場や支店を回った際、待っていたのは現場からの戸惑いの声だった。
「1周目のヒアリングはアウェー感がすごかった。『何を言っているのだろう?』『ピントがずれている』といった反応で、全く現場には響かなかった」(流郷氏)
ポテトチップスなどの商品を作る工場の製造ラインにおいて、同じ工程を日々こなす従業員たちにとって、本社が語る「挑戦」や「イノベーション」といった言葉は、自分たちには関係のないもののように受け止められた。かつての人事部門が現場へ足を運ぶ機会が少なかったこともあり、本社と現場の心理的な距離感も壁になっていたという。
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