人事チームはここで立ち止まり、現場の話を徹底的に聞き直すことにした。すると、本社の机上では気付けなかった「現場の視点」が見えてきた。
ポテトチップスを作る工程を例に挙げると、搬送されたジャガイモの洗浄・皮むきから、傷みや芽などを取り除くトリミング、スライス、フライ、そして揚げ上がりの色ムラの目視チェック、包装、パッケージの印字確認に至るまで、一連の決まった作業が整然と行われている。
一見すると決まったルーティンワークだが、流郷氏が現場の社員から聞いてハッとしたのは「その中で小さな異変に気付くことがものすごく大事」だということだった。
いつもと違う機械の音、わずかな形状の変化、水の流れ方の違和感――。これらをいち早く察知して大きなトラブルを防ぐ。その日々の小さな工夫や改善こそが、現場における立派な「挑戦」だった。
こうした気付きを得た人事チームは、半年をかけて基本方針を微修正し、最終的にカルビーが求める人材像として、以下の2つを定義した。
「挑戦」の定義を現場の目線へとすり合わせたことで、2周目に全国の拠点を回った際には、従業員から共感が示され「これならいける」と手応えを得られたという。
今回の刷新の大きな柱が、正社員と無期転換社員(3年の有期契約を経て無期雇用となった社員)の等級制度を統合したことだ。
同社には約1300人の無期転換社員が在籍し、その9割が工場に勤務する。これまでは、無期転換社員になっても契約社員時代と年収が変わらず、現場では慣習的に「契約さん」と呼ばれ続けるなど、見えない格差や心理的な壁が存在していた。
一方で、新卒正社員は最初から正社員の給与体系が適用されるため「どの入り口から入ったか」で処遇に差が出るゆがみが生じていた。
「同じチームにいて、同じラインで商品を作っているのに、そんな区別があるのは無理がある。一生懸命頑張る人がどんどん上がっていける仕組みにすべきだ」(人見氏)という強い問題意識が、今回の統合を後押しした。
これまでも正社員への登用制度(社員チャレンジ)はあったものの、課長の一歩手前にあたる主任クラスや班長レベルの仕事をこなせなければ合格できないという高いハードルが存在していた。
新制度では、この心理的・制度的な壁を取り払い、同じ等級体系の中で、日々の働きや改善活動がストレートに昇格・昇給へとつながる1本の道筋を示した。これにより、意欲のある従業員がステップアップできる環境を整えた。
さらに、採用競争力を高めるため、年収に占める基本給の割合を最大15%程度引き上げた。入社した多様な人材が定着し、長く活躍できる「人材活躍のサイクル」を回すための施策と位置付ける。
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