「単調な作業の繰り返しで、製品の価値が分からない」──石川県「間仕切りメーカー」は、工場の環境をどう変えたのか(1/2 ページ)

» 2026年06月02日 07時00分 公開
[中根ほづ美ITmedia]

 「単調な作業を繰り返しているだけで、自分が何を作っているのか分からなくなった」

 石川県小松市に本社を構えるパーティション(間仕切り)専業メーカーのコマニーでは、工場で働く社員からこのような声が上がっていた。

 自分たちの仕事が世の中にどのように貢献しているかを実感できず、社員のモチベーションが下がっている状態だったという。実際に、仕事に意義を見いだせなくなり、退職する社員もいた。

 この課題を解決するため、同社は「自慢したくなる工場プロジェクト」を立ち上げ、工場の環境における課題発見と解決に取り組んだ。

 同社では、単にパーティションを作るだけではなく、パーティションによって生まれる空間や、人と人とのつながり(=間)の価値を高めることに貢献したいという思いから、“間づくり”を追求する「間づくり研究所」を開設している。同プロジェクトは研究所の活動の一環として始動した。

 この取り組みは、工場で働く社員の誇りを醸成した好事例として評価され、Factory Pride Association(FPA、静岡県掛川市)が主催する、製造業における優れた取り組みを表彰する「第1回 Factory Pride Award」でグランプリを獲得した。

 FPAは、ものづくりに携わる人々の誇りを高め、製造業の価値や働く環境を見直すことを目的に、2025年7月に設立した団体だ。工場で働く人や製造業の変革に関心を持つ人々の交流の場をつくり、良い工場とは何かを考察し、製造業をアップデートしていくための取り組みを実施している。

 コマニーは、工場で働く人の誇りを育む仕組みをどのように作り上げていったのか。実際の取り組みを紹介する。

photo01 「第1回 Factory Pride Award」授与式の様子。アワードの審査員とコマニー社員の記念撮影(編集部撮影)

「自分が何を作っているのか分からない」 退職者まで出た現場の課題

 コマニーは1961年に設立したパーティションの専業メーカーで、営業・設計・製造・施工監理まで一貫して手がける。

 自慢したくなる工場プロジェクトは、約1250人の社員のうち「本気で工場を変えたい」と声を上げた52人でスタート。まずは工場で働く人の声を集め、課題を洗い出すところから始めた。

 集まった声を基に、5つの研究テーマを設定。その中の一つが「工場におけるコミュニケーションツール」の研究だった。

 同社の製造現場では、部門間の対話や価値共有の不足が課題となっていた。「日々、製品を作っているが、世の中にどのように役に立っているのか分からない」「単調な作業を繰り返しているだけ」――。実際に、仕事の意義を見いだせなくなり「自分が何を作っているのか分からなくなった」と退職する社員もいたという。

 そこでプロジェクトでは、工場内にコミュニケーションを活性化させるための休憩所「COMA cafe」(コマ カフェ)を設置した。ポイントは、カフェ内に同社のパーティションを数多く取り入れたことだ。製造現場で働くプロジェクトメンバーは次のように話す。

 「実際に、自分が携わっている生産ラインから生まれた製品が自分たちの工場で使われることで、製品の価値をあらためて理解できました。どのように世界に貢献しているのかを理解することで、誇りを持てるようになっています」

photo02 工場内に設置した「COMA cafe」(出所:Factory Pride Associationプレスリリース)
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