デジタル庁が主導する行政機関向けクラウド環境「ガバメントクラウド」(政府クラウド)の利用が広がっている。「行政データの保管場所」「公共SaaSのシステム基盤」といった用途を想定し、政府や自治体が共用することで「運用コスト削減」「セキュリティ強化」などを狙っている。
6月16日現在、5つのクラウドサービス――「Amazon Web Services」「Microsoft Azure」「Oracle Cloud Infrastructure」「Google Cloud」「さくらのクラウド」がガバメントクラウドに認定されている。さくらインターネットが運営するさくらのクラウドは、国内サービスとして唯一、2026年3月に正式認定された。
各サービスは、デジタル庁の技術的・法的要件を満たしている。その内容は「稼働率99.9%」「データを国内で保管」「データセンターを複数拠点に分散」「政府のセキュリティ評価制度(ISMAP)への登録」など厳しいものばかりだ。
認定クラウドサービスの中から、自治体や省庁が自組織に適したサービスを選択する。デジタル庁の資料によると、3月31日時点で国が使う情報システムの約85%がAmazon Web Services(AWS)上で稼働しているという。
「地方自治体でも約80%がAWSを採用している。その次に米Oracleが頑張っている状況だ」――デジタル庁の糸将之参事官は、6月10日の記者向け説明会でこう説明した。クラウドサービス別に利用する自治体数を見ると、AWSが1564団体、Oracle Cloud Infrastructure(OCI)が461団体、Google Cloudが8団体、Microsoft Azureは0団体だった。
国と地方の重要なシステム基盤が、特定の1社に大きく依存している状況について糸参事官は次のようにコメントした。
「ガバメントクラウド市場で、いろいろな事業者が切磋琢磨してバランスを保ちながら市場シェアを伸ばすのが良いと考えている。ただし、AWSに一日の長の実績があるため、それを理由に選ぶ組織が多いのだろう」
ガバメントクラウドは、クラウドサービス間でのデータ移動をしやすくするなど、特定のサービスに依存しないシステム構成を採用しているという。糸参事官は「クラウド事業者間で競争条件がそろうように環境を整えたい」と話した。
唯一の国産サービスであるさくらのクラウドを、デジタル庁はどう見ているのか。同サービスを運営するさくらインターネットは、1996年のインターネット黎明(れいめい)期に創業した。その後、レンタルサーバ事業やクラウドサービス事業を手掛けてきた老舗だ。
糸参事官は、ガバメントクラウドの各種要件を満たしていることを前提に「さくらインターネットは、クラウドサービスとして長年の実績があるため、市場で広く受け入れられる能力を持っている」と述べた。
「(行政機関のシステムとどのクラウドが適合するかは個別判断になるが)われわれとしては全てのクラウド事業者が実用に堪え得ると考えている。さくらインターネットも、国産ということで頑張ってほしい」(糸参事官)
糸参事官は「デジタル庁は、どのクラウド事業者も自信を持って使えると考えている」と強調した。偏りが大きい場合に「このサービスを利用せよ」と推奨する可能性について問われた同参事官は、次のように答えた。
「市場の健全性や競争条件という意味で、特定の企業に偏っている場合は(特定のサービスを推奨することを)考え得ることもあるだろう。ただし将来の話だ」(糸参事官)
クラウドを巡って「技術主権」「データ主権」などの「ソブリン性」が求められる中、圧倒的なシェアを誇るAWSに対して、さくらのクラウドがどこまで利用を伸ばせるかが今後の焦点になりそうだ。
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