この部下は過剰に反応しすぎなのだろうか。いや、実はそうでもないのだ。このように「AIに対する気疲れ」をする人は急増しているのだから。
「メディアの等式(Media Equation)」という心理学の概念がある。スタンフォード大学のクリフォード・ナスとバイロン・リーブスが1996年に提唱した理論だ。人間は、言葉を使って双方向でやりとりできる相手に対して、無意識のうちに人間と同じような社会的なルールを当てはめてしまう。礼儀、配慮、気遣い。相手が機械だと分かっていても、脳がそう動いてしまうのだ。
例えば、Googleで検索するときはどうだろう? 自分が住んでいる町で「おいしい焼き肉屋」を探したいとしたら、どんな検索キーワードを入力するだろうか。どれぐらいの回数、検索するだろうか。多くの人は「納得するまで」検索するはずだ。
「もっとリーズナブルな焼き肉屋はないかな」
「個室があるところがいい」
「日本酒を多く取りそろえている焼き肉屋ってないかな?」
あれこれ考えながら、5回でも、8回でも、10回でも、納得するまで検索するだろう。Amazonで本を買う時もそうではないか。現在自分が抱えている課題を解決してくれそうな本を探したいのなら、その本が見つかるまで、いろいろな検索キーワードを入力して試すはずだ。
しかし、相手が生成AIだと、なぜか“配慮”してしまう人がいる。
決定的に違うのは、ChatGPTやGeminiは「分かりました」「承知しました」「修正します」と、まるで人間のように言葉を返してくる。それどころか、かなり丁寧な文章を返すことも多い。
そのため、脳の無意識の部分が「目の前に誰かいる」と感じてしまう。何度もやり直しをさせることに罪悪感が生まれる。「こっちの指示が悪いのに、ダメ出しばかりしている」と自分を責めてしまうのだ。
この心理現象は、AIの応答が丁寧になればなるほど強くなるようだ。日本語の生成AIは特に敬語が丁寧で、気遣いの表現が多い。それが擬人化をさらに加速させる。
「それは大変失礼しました。もう一度やり直しますね」
「私の解釈が間違っていたようです。次は○○の視点でアイデアを練ってみます」
このように返してくるものだから、冒頭の部下の反応は、ごく自然な心理反応とも言える。
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