ため息、舌打ち、強いタイピング音は、なぜ嫌われるのか? 職場で広がる「音ハラ」の根っこ(3/4 ページ)

» 2026年06月30日 08時00分 公開

若い世代ほど、音に敏感なのはなぜか

 音への感度には世代差がある。村嵜氏によれば、音ハラを指摘される人は20〜60代と幅広いが、音ハラに関する相談を寄せるのは20〜40代が中心だ。背景には、育った時代の違いがある。20〜40代は、ハラスメントが今ほど問題視されていなかった時代を知らず、互いに配慮し合うことを当然と考える人が多い。

 配慮が当然という感覚からすると、不快な音はマナー違反と映り、その分だけ敏感になる。加えて、キャリア形成の途上にあり、音ハラで自分のパフォーマンスが落ちるのを避けたいという意識も働く。

 一方で、概念の浸透は別の副作用ももたらす。ハラスメントへの目が厳しくなり、言いたいことを言いづらくなった上司が、不満を独り言や愚痴で消化する。聞きたくなくても聞こえるその声が、また音ハラとして名指しされる。ハラスメントを抑えようとする動きが、かえって不快な音を生む構図だ。

photo 世代によって音の感度にバラツキも

 村嵜氏は、音ハラのほか「不機嫌ハラスメント」なども定義してきた。「定義することで、曖昧なまま過剰に主張する人を抑制できる」と語る。日本ハラスメント協会が定義し責任を持つことで、本当に悩む人には判断基準を示せるという。ただ、その線引きは容易ではない。

 音ハラかどうかの判断にもいくつかの基準があるが、周囲がその音を不快と感じているかどうかは、客観的な証拠や第三者の証言が得にくく、判断が割れやすい。人によって音の感じ方が異なるという根本的な難しさがある。

 それでも定義する意義は大きい。「何でもハラスメントと呼ぶなという声も、新しいハラスメントに悩む声も、どちらも大事。世代によって受け止め方は異なるが、全世代が共存しなければならないからこそ、基準を示すことに意味がある」(村嵜氏)

 新しいハラスメントが次々と生まれるのは、人間関係の距離感が急速に変化している証でもある。

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