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AIが作れない「面白さ」をどう設計? セガXDが実践する「ゲーム発想」で体験価値を高める方法(1/3 ページ)

» 2026年07月07日 06時00分 公開
[濱川太一ITmedia]

 技術の進化や市場の成熟によって、製品やサービスの機能差は急速に縮まりつつある。利便性や価格だけでは差別化が難しくなり、企業にとって悩みの種となっている。

 こうした中、ゲーム開発のセガエックスディー(セガXD、東京都新宿区)は、ゲームが持つ「人を夢中にさせる力」をビジネス課題の解決に応用する「ゲーミフィケーション」の考え方に着目する。

 同社取締役 執行役員COOの伊藤真人氏は、ゲーミフィケーションの考え方を生かした、人の感情や欲求に働きかける体験設計こそが、顧客との関係構築やサービスの継続利用につながると語る。

 セガXD主催のメディア向け勉強会に登壇した伊藤氏の講演「ゲーミフィケーションを活用した感情に訴える『繰り返し使いたくなる』体験設計」の内容を紹介する。

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CX セガエックスディー取締役 執行役員COOの伊藤真人氏(筆者撮影)

AIが作れない「面白さ」をどう設計?

 生成AIに簡単なプロンプトを打ち込めば、誰でも高度なレベルの情報が得られるようになった。情報自体が汎用(はんよう)化するいま、重要になるのは、AIでは簡単に作ることができない価値となる。 

 そこで伊藤氏が重視するのが「人の心を動かす発想」だ。

 人はどんな時に「面白さ」を感じるのか。伊藤氏は「面白さ」を「意外性」と「共感性」の掛け合わせで説明する。思いもよらなかったけれど、言われてみれば納得できる──そんな瞬間に出会ったとき、人は面白さを感じるという。

 例えば「カタカナの『タ』から始まる乗り物を考えてみて」と問われたとき。多くの人は「タクシー」を思い浮かべる。

 しかし「タイムマシン」や「タケコプター」といった回答が出てくると「なるほど」「言われてみれば確かに」と感じる。そこに意外性と共感性が生まれる。

 伊藤氏は、こうした人間同士が共有する物語や文脈を起点とした発想は、AIには難しく、人間ならではの強みが残されている領域と見る。

 こうした物語や文脈に基づいた「人の心を動かす発想」を、どうサービスに設計するか。そこに企業の競争力を生み出す余地があると伊藤氏は語る。

 セガXDは、ゲームが持つ「人を夢中にさせる力」=「ゲーミフィケーション」を応用し、これまでさまざまな取り組みを展開してきた。

 その一つが、2023年に神奈川県総合防災センターと共同で実施した防災訓練だ。

 日頃の備えは大事だと頭では理解していても、実際に防災訓練に参加するとなると腰が重くなる。そこで同社は、ゲーミフィケーションを用いて「楽しく学べるゲーム体験型防災訓練」を企画した。

 ストーリーはこうだ。

 未確認隕石が落下する可能性が高いとして、政府から特別警戒警報が発表される。衝突予想時刻まで残り1時間強。その間に、シェルター(避難所)へ全員が避難し、隕石の爆風を防ぐためのシェルターの扉を閉められれば避難は成功──。

 参加者たちは、神奈川県総合防災センター内の「地震体験エリア」や「風水害エリア」など全てを体験し、エリアごとにスタッフからクイズを出題してもらう。正解して得られた数字が、避難したシェルターの鍵を閉める暗証番号となる──という内容だ。

CX セガXDが企画したゲーム体験型防災訓練「THE SHELTER」。防災訓練らしさのない告知ポスターが印象的だ(出典:プレスリリース)

 このイベントには定員の200人を上回る応募が集まり、抽選になるほどの反響があったという。

 「人は正論では動かない。『大事だからやりましょう』と言ってもなかなか動かない」と伊藤氏は指摘する。「楽しそうだと思うからこそ参加し、結果として学びや実利を得ていく」。その順番が大切だという。

 命令や強制ではなく、自発的に行動したくなる体験を作る。そこにゲーミフィケーションの考え方が生きる。

 もちろん楽しければよいわけではなく、これらの取り組みは娯楽を目指したものではない。伊藤氏は、楽しさを手段として課題解決につなげることが、ゲーミフィケーションの本質だと説明する。

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