働き方改革から7年を経たいまでも「改善」のレベルにとどまっている職場の方が多く目につきます。それを「改革」だと見なしてしまうことがミスリードとなって、誤算へと行きつくのです。
個々の職場の中には、改革を実践していると思われる事例も見受けられます。働き続けたいと希望する社員の思いを汲んで、雇用上限を撤廃した家電量販大手のノジマには、80歳以上でも活躍している社員がいます。専門商社の三洋貿易は、コーヒー製造に携わる障害者雇用を増やして顧客への新たな価値提供に挑戦しています。BPOアウトソーシング事業を展開するキャスター(東京都千代田区)は、フルリモートで全社員が勤務するスタイルを貫いて東証グロース上場を果たしました。
これらの取り組みからは、年齢や障害、勤務場所を巡る世界線そのものを刷新しようとする職場の姿勢が感じられます。
社員が実際に選択できる働き方は、職場が前提としている世界線に大きく左右されます。ノー残業デーの導入や男性育休取得の促進といった制度は、うたい文句としては目を引きますが、入社後に「聞いていた話と違う」などと後悔しないためには、制度そのものよりも、その制度を運用する職場の認識に目を向ける必要があります。
ノー残業デーに仕事を早く終えられるよう、職場ではどんな工夫をしているのか。育休の取得は、昇進や昇格にどんな影響を与えるのか。入社前に得られる情報には限りがあるものの、面接などで一歩踏み込んだ質問をしてみると、表面的な制度だけでは把握できない職場の新たな姿が見えてくるかもしれません。
骨太方針の決定を経て、働き方改革は新たなステージへと向かっていくことになります。ただ、従来の世界線が刷新されないままだと「給与が減るから残業したい」といった矛盾を含む未来図しか描くことができません。
労働時間規制を緩和するか強化するかといった、時間の長短ばかり議論しているうちは、働き方改革ではなく、働き方改善にとどまっている証拠だと言えます。政府においても職場においても、根底にある世界線の刷新にこそフォーカスする必要があるのではないでしょうか。
ワークスタイル研究家。1973年三重県津市生まれ。愛知大学文学部卒業後、大手人材サービス企業の事業責任者、業界専門誌『月刊人材ビジネス』営業推進部部長 兼 編集委員の他、経営企画・人事・広報部門等の役員・管理職を歴任。所長として立ち上げた調査機関『しゅふJOB総研』では、仕事と家庭の両立を希望する主婦・主夫層を中心にのべ5万人以上の声を調査。レポートは300本を超える。雇用労働分野に20年以上携わり、厚生労働省委託事業検討会委員等も務める。NHK「あさイチ」「クローズアップ現代」他メディア出演多数。
現在は、『人材サービスの公益的発展を考える会』主宰、『ヒトラボ』編集長、しゅふJOB総研 研究顧問、すばる審査評価機構 非常勤監査役の他、執筆、講演、広報ブランディングアドバイザリー等に従事。日本労務学会員。男女の双子を含む4児の父で兼業主夫。
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出社回帰、休暇も壁あり……働き方の「ニューノーマル」は幻だったのか?Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
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