逆パワハラに怯える管理職、放置する経営陣――「ハラスメント対応をあいまいにする会社」が自滅する理由(2/3 ページ)

» 2026年08月25日 07時00分 公開
[村上ゆかりITmedia]

ハラスメントを訴えても、その後の対応について説明がない

 厚労省の2023年度「職場のハラスメントに関する実態調査」では、勤務先でパワハラを認識していたと答えた人のうち、会社の判断について最も多かった回答は「ハラスメントがあったともなかったとも判断せず、あいまいなままだった」で61.4%、「ハラスメントと認めた」は18.8%にとどまった。会社が何らかの対応をとったかについても、「特に何もしなかった」が53.2%で最多だった。

 これは申告した本人の認識を聞いた結果のため、実際には会社が結論を出していたものの本人には伝わっていなかった例も含まれる。しかし訴えた当事者から見て、6割のハラスメント問題は宙に浮いたままということだ。

 関連する判例も見ていこう。学校法人茶屋四郎次郎記念学園事件(東京地裁 2022年4月7日判決)では、大学のハラスメント対策部会が、寄せられたハラスメントの申告に対し「審議不能」との結論を出したものの、申告者への回答までに8カ月余りを要していた。裁判所は、使用者は申告者に対して結論の内容如何を問わず遅滞なく告知する義務を負うとし、合理的理由のない遅延を債務不履行と認定した。

 つまりこの事例では、「ハラスメントは認定できませんでした」と伝えれば事足りるのに、それすら返していなかったことが問題とされた。

 もっとも、あえて「ハラスメントと認定したかどうか」を告げない選択が適切であるケースもある。

  • 説明が二次被害を招く場合
  • 行為者のプライバシーや協力者の特定に関わる場合
  • 和解に守秘条項がある場合
  • 本人が事を荒立てたくないと望む場合

 上記のケースはいずれも「伝えない」と判断したものだ。こうしたケースは実務上、珍しいことではない。

 しかし、一切何も伝えなければ、結局は判断していないのと変わらないのではないか。特に、ハラスメントを訴えられた管理職に何も伝えないということは、管理職からすれば、疑いがはれたかどうか確かめる手段がないことになる。

現場は「やらな過ぎる」か「やり過ぎる」

 会社自身の判断が示されなければ、その空白を埋めるのは、その場にいる管理職だ。権限も後ろ盾もない者が責任だけを負うとき、選択肢は2つに絞られる。

 1つは、部下に「何も言わないようにする」ことだ。このように管理職が萎縮した結果は、過剰な配慮によって部下の成長機会が失われる「ホワイトハラスメント(ホワハラ)」として現れる。

「ホワイトハラスメント」に悩む部下

 マイナビが中途入社1年以内の正社員1446人に聞いた調査では、ホワハラを経験したと答えた人が13.6%。その71.4%が1年以内の転職を考えており、未経験者(48.1%)を23.3ポイント上回った。

 もう1つは、パワハラの疑いが生じた時点で処分に踏み切ってしまうことだ。丁寧な事実確認をしないまま、経営層が管理職に不当に重い処分を下せば、今度は会社が裁判で敗訴することになる。実際、パワハラの存在自体は認定されながら、懲戒解雇の処分は重すぎるとして無効とされ、大学に約1900万円の支払いが命じられた判例もある(国立大学法人群馬大学事件、前橋地裁2017年10月4日判決)。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アイティメディアからのお知らせ

SaaS最新情報 by ITセレクトPR
あなたにおすすめの記事PR