これまでのリスクを踏まえると、SBGが今回1兆円を調達する「本当の意図」が見えてくる。
この社債は、7年間、金利が変わらない約束だ。最大のメリットは、保有株の価値がどれだけ下がっても、追加の担保(追証)を求められたり、途中で一括返済を迫られたりしない点にある。
銀行からの融資が「株価の動きにビクビクしなければならない借金」であるのに対し、今回の社債は「株価の暴落から完全に守られた安全な借金」である。市場の混乱に巻き込まれずに資金を集めるには、この社債という形が適している。
SBGは「9月の借金返済とAI投資に使う」と発表しているが、本音は「将来株価が下がったときに、OpenAIなどの株を強制売却させられないための防衛資金(クッション)」だと読み解ける。年4.90%という破格の利息は、SBGがその「絶対に安全な防衛資金」を手に入れるために、リスクを取ってくれた投資家へ支払う対価といえる。
ではなぜ、その防衛資金をプロの「機関投資家」から大口の資金を集めないのだろうか。
SBGは7月29日、今回の個人向け「ホークスボンド」とは別に、機関投資家向けの社債(第68回・第69回)の条件を決定している。その内容は、3年債が800億円(利率3.270%)、5年債が100億円(利率3.886%)で、合計900億円の規模にとどまった。
もちろん、SBGが機関投資家を軽視しているわけではない。同じ第1四半期には、海外のプロ向けに外貨建社債で35億ドル(約5300億円)、国内でも「ハイブリッド社債」で6780億円を調達している。
同社は「個人」と「機関投資家」の双方から、それぞれ1兆円ずつを調達する基本方針を掲げているのだ。しかし、国内の機関投資家からストレートに巨額の資金を集めるには、ある高いハードルが存在する。それが、機関投資家たちが自らに課している「運用のルール(運用規程)」だ。
彼らの多くは、安全性の観点から、投資対象を「投資適格(安全性が高いとされる基準)」の社債に限定している。実は、現在のSBGの格付けは、米大手のS&Pグローバル・レーティングで「BB+」である。S&Pの基準において、投資適格とされる下限は「BBB−」だ。SBGの「BB+」はそこから一歩手前の水準(投機的格付け)に位置する。
この「投資適格に一歩届かない」という事実こそが、大口のプロ資金が流入しにくい最大の理由であり、国内の機関投資家向けの募集額が900億円と小さくなった背景だと考えられる。
こうしたプロ側の事情を見越して、SBGが戦略的に活用してきたのが個人マネーだ。ちなみに、「福岡ソフトバンクホークスボンド」の名を冠した個人向け社債は、過去に8回も発行されている。プロの厳しい規制をかいくぐる海外調達や特殊なハイブリッド社債と、知名度を生かして巨額の資金を集める国内の個人向け市場。この2つのルートを巧みに使い分けることで、SBGは格付けの壁を乗り越え、機動的な資金調達に成功していると評価すべきだろう。
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