「持病は?」「子どもは?」 面接官が“聞いてはいけない質問”をする本当の問題(2/3 ページ)

» 2026年09月07日 08時00分 公開
[村上ゆかりITmedia]

面接は「その人を知る場」ではない

 厚生労働省は、公正な採用選考の基本として「応募者が、求人職種の職務遂行上必要な適性・能力をもっているかどうか」を基準にするよう求めている。具体的には、本籍・出生地、家族、住宅状況、宗教、支持政党、人生観、尊敬する人物、愛読書などは「就職差別につながるおそれがある事項」とされている。

 「愛読書まで聞いてはダメなのか」と驚く人もいるだろう。しかし重要なのは、「なぜ、その質問をするのか」である。

 子どもの有無から何を判断するのか。愛読書と仕事の成果にどんな関係があるのか。それらに明確に答えられないなら、軽率に質問をすべきではないだろう。

人は意味のない回答からでも「分かった気」になる

 面接で得た情報が、かえって判断を狂わせることを示す興味深い実験がある。

 2013年に米イェール大学などの研究チームが発表した実験において、参加者は学生の「その後の大学成績」を予測する課題に取り組んだ。判断材料として「過去の成績のみ」を与えられたグループと、「過去の成績に加えて面接での情報」も与えられたグループの精度を比較している。

 この実験で驚くべきは、面接を行ったグループの方が予測精度が低かったという点だ。さらに一部の学生が質問にランダムに回答していたにもかかわらず、面接官役の参加者は「相手から有用な情報を得られた」と思い込んでいた。

 人間には、根拠の薄い情報からでも「この人はこういう人物だ」と自分の中で辻褄(つじつま)の合った人物像を作り上げてしまう心理的傾向がある。研究者はこの意味づけのプロセスを「センスメイキング(sensemaking)」と呼ぶ。

面接で「分かった気になってしまう」ことは危険だ

 面接で無用な質問をする本当のリスクは、単なる時間の浪費ではない。根拠に乏しい情報によって面接官が「相手を理解できた」と思い込み、かえって評価を見誤ってしまう点にある。

 実際の採用担当者を対象としたカウゼル(Kausel)らの研究でも、同様の傾向が確認されている。形式を定めない「非構造化面接」の情報を取り入れると、担当者は自分の判断に強い自信を持つようになるものの、評価の正確さ自体は向上しなかった。

 面接官が感じた「相手を深く理解できた」という手応えと、実際の「正しく見極められたか」という精度は、まったく別物なのだ。

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