土肥: 左利き用の筆「LEFTY」が登場しました。筆の軸に角度をつけ、左手でも右手と同じような筆使いができるように設計していますよね。通常の筆とは見た目がかなり違うので、初めて見た人は「ぎょっ」とするかもしれません。
ワタシは右利きなので、これまで意識したことがなかったのですが、左手で筆を持つと、筆先が手の奥側に向きやすく、穂先(筆の先端部分のこと)や書いている線が手で隠れてしまう。また、筆先の向きを調整するために、手首をひねる必要もある。
そこでLEFTYは、軸に角度を付けることで、筆先を見やすくし、手首を無理にひねらなくても、とめ・はね・はらいなどをスムーズに書けるようにしました。こうした左利き用の筆を開発することになったきっかけを教えてください。
中井: 当社は創業300年以上の歴史がありますが、これまで「左利き用の筆がほしい」という声は、ほとんどありませんでした。昔は、子どものころにお箸や鉛筆を左手で使っていると、親から右手に直されることが多かったですよね。ということもあって、「書道は右手で書くもの」という考えが根強く、左手で書く人から「左利き用の筆がほしい」という声が上がりにくかったのだと思います。
ただ、時代の流れとともに、「お箸や鉛筆を左手で使ってもいい」という考えが広がり、数年ほど前から「左利き用の筆をつくってくれないか」という問い合わせが増えてきました。
しかし、問い合わせが増えたからといって、すぐに製品化できたわけではありません。新製品を開発するには、コストがかかる。どのくらいの需要があるのか、それに見合うだけの売り上げが見込めるのか。費用対効果を考えると、すぐには製品化に踏み切れませんでした。
土肥: 日本左利き協会の調査によると、「幼少期に矯正された」と回答した人は、1940〜70年代生まれでは7〜8割だったのに対し、1996〜2005年生まれでは36%でした。左利きを矯正せず、そのまま大人になる人が増えたことも、「左利き用の筆をつくってほしい」という声が増えてきた背景にあるわけですね。
ちなみに、左利きの人はどのくらいいるのか。さまざまな調査を見ると、約10人に1人が左利きですよね。左利き用のはさみや定規は、以前からある。そう考えると、左利き用の筆も、もっと早くからあってもよかったのではないでしょうか?
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