専門家の技を再現するには、味や使い心地を繰り返し確かめ、部品や制御を調整する必要があります。その作り込みが増えれば、一つの商品にかける開発時間も長くなる。限られた人員でそうした商品を増やせば、別のニーズに素早く応える余力が失われるおそれがあります。
ニッチな需要を速く拾うことで稼いでいた会社が、一つの商品に時間をかけて育てる経営へ重心を移す。その間も従来の商品と販路を支える仕事は残ります。開発体制を組み替えなければ、高付加価値化が機動力を弱める結果になりかねません。
競争相手も変わります。高価格でも選んでもらうには、知名度や販売網を持つ大手や専門メーカーに対して、品質や使い心地の違いを伝える必要があります。小さな市場に先回りする力に加え、時間と費用をかけて顧客を獲得する力も求められるのです。
実際、ツインバードは2025年6月に開示された資料「今後の事業展開」で、新商品開発の効率低下を課題に挙げています。新商品売上高は2022年度の21億円から2024年度には6億円へ減少。開発期間の短縮や、企画開発と営業が連携する体制への見直しも打ち出しました。
この売上減が、作り込みによる開発期間の長期化で起きたとは断定できません。ただ、開発が長引いて発売が遅れれば、販売機会を逃し、開発費の回収も遅れます。高単価でも、開発に時間と費用がかかれば、期待した利益が残るとは限らないのです。
生産面でも変化があります。円安で海外生産のコスト上の利点が薄れる中、同社は国内製造比率を30%から50%へ高める方針を示しました。しかし、国内で確保した人員や設備を十分に使うには、販売量が必要です。新商品が計画通りに売れなければ、人件費や減価償却費を賄う負担が重くなります。
開発が長引く間も、生産体制を維持する費用はかかります。国内回帰による固定費増が赤字の原因だとまでは確認できませんが、商品単価だけでなく、開発を始めてから販売し、投資を回収するまでの時間も含めて、採算を見直す必要があります。
2026年2月期の売上高は89億9800万円、営業損失は8億5500万円でした。粗利は約21億円なのに対し、販管費は約30億円あります。売上減と粗利率の低下に対して、販管費は前期とほぼ同額にとどまり、費用負担が重くなったのです。
加えて、2017年に参入した家庭用冷蔵庫・洗濯機でも、競争激化で採算が悪化しました。これも、商品企画力を大きな市場で生かす挑戦でしたが、価格競争への対応とプレミアム商品の育成が、同じ会社の限られた経営資源に重くのしかかったと考えられます。
「JALとANA」どこで違いが生まれたのか? コロナ禍を乗り越えた空の現在地
「ディズニー離れ」のうわさは本当か 入園者2700万人と売上のギャップ
なぜ「金の卵」を守れなかったのか 東芝と日立、明暗を分けた企業統治のあり方
ドトールVS.コメダ なぜ好調? 店舗数だけでは分からない「強さ」の違いCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング