ブランドを育てるには時間がかかります。ブランドは、ロゴや広告を整えた時点で完成するものではありません。顧客が使って満足し、周囲に勧め、次の商品も選ぶ。こうした経験の積み重ねによって初めて、価格だけでは比較されにくい関係が生まれます。
新商品の開発には数年かかると理解している経営陣であっても、ブランド投資となると、「商品も広告もそろっているのだから、すぐに売れるはずだ」と即効性を求めがちです。
しかし、商品を発売した後も、売り方を工夫したり、顧客の反応を踏まえて改良したりする投資を続けなければ、商品は育ちません。売り上げが伸び悩んだからと途中で予算を削り、次々と別の新商品へ期待を移してしまうと、「開発することには投資するのに、時間をかけて育てる努力はしない」という悪循環に陥ってしまいます。
一方で、長期で育てることは、採算を問わず投資を続けることでもありません。重要なのは、いつまでに顧客と販売規模を獲得し、どのように投資を回収するのかという道筋を描き、途中で成果を確かめることです。
値引きに頼らず売れているか、狙った顧客に届いているか、販路ごとの採算が改善しているか。そうした兆しがあるなら、短期的な利益だけで判断せず、投資を継続する。一方で前提が崩れたなら、商品や販路、投資の範囲を修正する。目標未達のたびに方針を変えることも、「長期投資だから」と検証を避けることも、適切な経営とはいえません。
日本企業には、高付加価値化やブランド力の強化が必要だといわれます。私は、その議論が研究開発や設備投資に偏り、商品を顧客に届け、その価値を伝え、継続的な購入につなげる活動への投資が軽視されてきたのではないかと感じています。高い価格を付けることと、その価格で選ばれ続けることには、大きな違いがあるからです。
両社には、顧客を引き付ける商品を生み出す力があります。その力を持続的な利益につなげるには、自社が戦える領域を見極め、投資回収を意識しながら、開発から販売まで一貫して取り組み続ける必要があります。
高付加価値化を商品開発だけの課題にとどめず、資本配分や販売まで含めた経営全体の課題として捉えられるか。そこに、両社の再成長だけでなく、日本企業のブランド戦略を考える鍵があるのではないでしょうか。
マネックス・アセットマネジメント株式会社 執行役員株式運用部長
草刈 貴弘
大学卒業後、舞台役者などを経て2007年にSBIリアルマーケティングに入社。2008年にさわかみ投信に転じ、顧客対応部門、バックオフィスの責任者、アナリスト、ファンドマネージャーを経験し、2013年に最高投資責任者、運用調査部長、2015年取締役最高投資責任者に就任。2023年3月に現職のカタリスト投資顧問に入社し、同年6月に取締役共同社長。2026年4月から、マネックス・アセットマネジメント株式会社 執行役員株式運用部長に就任。
投資先企業の企業価値向上に直接寄与することで、日本企業の成長と資本市場の活性化と、個人投資家の財産づくりを両立することを志向する。ファンダメンタル分析を基にしたバリュー投資を軸に、持続的成長の転換点を探るのをモットーとする。現在、朝日インテック社外取締役。東洋大学理工学部卒。
「JALとANA」どこで違いが生まれたのか? コロナ禍を乗り越えた空の現在地
「ディズニー離れ」のうわさは本当か 入園者2700万人と売上のギャップ
なぜ「金の卵」を守れなかったのか 東芝と日立、明暗を分けた企業統治のあり方
ドトールVS.コメダ なぜ好調? 店舗数だけでは分からない「強さ」の違いCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング