弁当屋や銭湯がじわじわ消えている。でも、それだけで「日本の衰退」とは言えないワケスピン経済の歩き方(1/6 ページ)

» 2026年09月24日 09時25分 公開
[窪田順生ITmedia]

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スピン経済の歩き方:

 日本ではあまり馴染みがないが、海外では政治家や企業が自分に有利な情報操作を行うことを「スピンコントロール」と呼ぶ。企業戦略には実はこの「スピン」という視点が欠かすことができない。

 本連載では、私たちが普段何気なく接している経済情報、企業のプロモーション、PRにいったいどのような狙いがあり、緻密な戦略があるのかという「スピン」をひも解いていきたい。

 「お金がなかった新入社員時代、毎日のように通っていた近所のお弁当屋さんや銭湯。あれから10年以上たった今、どうなっているかな……きっと最近の物価高騰で、みんななくなってしまっているか」

 そんなノスタルジックな気分になっている方も多いのではないか。昨今の物価高騰を受けて、長年、地域に根差した商売を続けてきた零細事業者が相次いで廃業しているという、いわば「消えゆく○○」系の寂しいニュースが続いているからだ。

 東京商工リサーチによれば、「お弁当屋さん」の倒産が急増している。肉や野菜などの食材や包装資材、電気・ガス料金の値上がりが経営に重くのしかかっているうえ、コンビニ、フードデリバリーなどの競合も増えていることで、2026年は8月までに83件が倒産。これまで最多だった2025年(1〜12月)の89件を超えるペースで、「お弁当屋さん」が姿を消しているという。

弁当店の倒産件数推移(出典:東京商工リサーチ

 銭湯の廃業も歯止めがかからない、と朝日新聞が報じている。施設の老朽化や経営者の高齢化に加え、重油価格の高騰や物価高がダメ押しとなって廃業が後を絶たない。全国公衆浴場業生活衛生同業組合連合会に加入する銭湯は2026年4月時点で、1493軒まで減っているという。ちなみに、全国の「一般公衆浴場」は、この50年間で8割超が消滅している。

 このようなニュースを耳にすると「今の日本の衰退ぶりを象徴する話だ」と暗い気持ちになる方も多いだろう。あるいは、「こうやって苦しんでいる事業者を助けるために、もっと大規模な減税が必要なのだ」と高市政権のバラま……ではなく積極財政を期待する人も多いのではないか。

 ただ、個人的にはこういう「消えゆく○○」系のニュースは「大衆の郷愁や不安をくすぐってアクセスを稼ぐ」という商業的な性格も強いので、あまり真に受けないほうがいいと思っている。

 ニュースも売り物なので、多くの読者や視聴者に届かなければ「価値」がない。そこでどうしても悪人はより悪く、スキャンダルはより刺激的に、そして被害はより甚大に、と分かりやすい面ばかりを強調して、やや話を盛ってしまう傾向がある。

 「消えゆく○○」系のニュースも同様だ。倒産や廃業数が増えているのは確かに事実であって、経営者やその家族を思えば気の毒なことではあるのだが、一歩引いて俯瞰(ふかん)すると、日本経済全体や消費者にとって、必ずしも悪い話ばかりではない。

 停滞が続く日本の経済成長に欠かすことのできない「産業の新陳代謝」が進んでいる証でもあるからだ。

 一体どういうことか。お弁当屋さんを例に説明していこう。

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