そこで、とにもかくにも倒産を回避するため、国が「産業振興策」を講じるべきだという議論が強まっていく。要するに、財政出動してバラマキや事業者への優遇措置を講じることで「事業存続」を後押しするのだ。それこそが、失業対策であり景気対策でもあるという考え方が強い。
ただ、他の先進国の廃業率を見ても分かるように、そうした形で事業者の存続を広く支える経済政策を採用している先進国は、現在では多くない。
賃上げなど経済環境の変化に対応できない経営者は、無理をせず早めにギブアップして「席」を空けてもらったほうが、新しいプレーヤーがどんどん参入して、新しい取り組みに挑戦できる。
倒産寸前の会社が歯を食いしばって延命するよりも、早く廃業してくれたほうが、実は従業員にとってもメリットが大きい。日本など一部の先進国では人口減少が課題となっており、外国人労働者の受け入れを進めるほど「人手不足」が深刻なので、選り好みをしなければ前職より高い賃金を得られる可能性もあるからだ。
こうした考え方に反発する人もいるだろうが、日本は毎年、和歌山県の人口に相当する約90万人が減少し、高齢者の比率が高くなっていく「縮みゆく社会」だ。
そんなふうに消費が冷え込んでいく中で、新しいプレーヤーの参入を促し、新しい市場を拡大するには、どうしても古いプレーヤーや、時代にマッチしないビジネスモデルには、市場から退出してもらう必要がある。国による支援策や優遇措置によって、こうした新陳代謝が進みにくい面もあった。
さまざまな業界で「過去最多の倒産」が相次いでいるのは、産業の新陳代謝が少しずつ進み始めている表れでもある。ただ、先ほどの先進国との比較でも分かるように、日本の開業率・廃業率は依然として低く、海外と比べると産業の新陳代謝は活発とはいえない。
日本経済を上向かせるために必要不可欠な「産業の新陳代謝」を促すためには、「消えゆく○○」というニュースも、産業の新陳代謝という側面から捉える、多角的な視点が必要なのかもしれない。
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。窪田順生のYouTube『地下メンタリーチャンネル』
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受
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