では、具体的に何をすればいいのか。現場で働くベテランに長く活躍してもらうために、企業が取り組むべきことは、以下の3つだと筆者は考える。
一つ一つ見ていこう。
日本では長らく、定年後の再雇用で賃金が大幅に下がることが当然とされてきた。同じ仕事をしているのに、給与だけが20%も30%も落ちる。これでは、意欲が続くはずがない。
年齢ではなく、技能で処遇を決める。指導的な役割を担うなら、その分を手当として支給すればいい。基準は年齢でも社歴でもない。市場価値である。それを正しく評価できないと、優秀なベテランほど外に出ていってしまうだろう。
現場で活躍できるかどうかは、健康状態に大きく左右される。帝国データバンクの調査で建設業の期待年齢が最も低かった理由は、猛暑下の作業といった身体的負荷も関係しているだろう。
従って健康診断を実施するだけでは足りない。作業環境の改善、休憩の取り方、体力に合わせた作業配分まで踏み込んでみてはどうか。健康管理への投資は、福利厚生ではない。技能という資産を守るための、事業投資と捉えるべきだ。
ブルーカラーの現場は、ホワイトカラーのように場所や時間を柔軟にできない。テレワークや時間給といった制度は、使いづらいだろう。しかし、工夫の余地はある。
例えば、製造現場で勤務を4時間単位のチーム制にし、作業負担を軽減した企業がある。体力や生活事情に応じて複数の勤務形態から選べるようにし、70歳雇用を実現した企業もある。親の介護や配偶者の通院など、家族の事情を抱えるベテランも多い。その事情を前提に制度を設計し直すのだ。
冒頭の経営者の問いに戻ろう。
問われているのは「何歳まで働いてほしいか」ではない。「誰に残ってほしいのか」、そして「そのために何を企業として用意するのか」である。数字だけを掲げても、優秀な人は残らないのだ。
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