では、なぜ「成果を出せばOK」から「それでもダメだ」へと変わったのか。理由は以下の3つである。
一つ一つ見ていこう。
現代のビジネスは、以前とは比べものにならないほど複雑になった。1人のスター社員がスタンドプレーで押し切れる領域は確実に狭まっている。
多様な専門性を持つメンバーが、互いに補い合いながら成果を出す。このスタイルに移行した以上、協調できない人材の価値は相対的に下がっていく。どれだけ個人の数字が高くてもチームを成長に導くことができないからだ。
Googleの研究などによって、チームの生産性を最も高めるのは、メンバーが恐怖を感じず、安心して発言できる環境だということが明らかになった。
ブリリアント・ジャークは、この環境を真っ先に壊す。誰も反論しなくなり、質問も出なくなる。そのせいか、間違った方向へチームが進んでも、誰も異を唱えることができない。そういうチームができあがってしまうのである。
そして決め手になったのがデータだ。
組織行動学者のウィル・フェルプスらが行った、通称「腐ったリンゴの実験」は有名だ。5〜15人程度のチームに、性格の悪い人、怠け者、周囲を暗くする人のいずれかを1人だけ混ぜる。すると、チーム全体のパフォーマンスが30〜40%も低下したという。恐ろしい事実である。
注目すべきは、どのタイプであっても結果がほぼ同じだった点だ。攻撃的であろうが、怠け者であろうが、たった1人の存在がチーム全体の生産性を落とす。しかも、そこに離職コストまで加われば、損失はさらに膨らむだろう。「成果を出しているから差し引きプラス」という理屈は、もはや成り立たないのである。
ここまで読んで「ならば即座に解雇すればいいじゃないか」と考える人がいるかもしれない。しかし、日本ではそう単純にいかない。
解雇規制が厳しい日本では、性格や協調性の欠如を理由に解雇することは現実的ではない。Netflixのように「そもそも所属させない」という対処は、そのまま持ち込めないのだ。
さらに厄介な問題がある。ブリリアント・ジャークは、誰に対しても攻撃的なわけではないという点だ。
こうした人は、実はチーム内に味方も多い。努力を重ねているから、尊敬を集めていることも珍しくない。「あの人をロールモデルにしています」と語る若手がいたり「あの人が厳しく言ってもらったおかげで成長できた」と感謝する人がいたりする。
つまり100%の嫌なヤツではないのだ。ただ、嫌な部分が1割程度に過ぎなかったとしても、その1割がチームに与える影響は甚大だ。その上、結果を出しているとマネジャーはその「1割」だけを理由にバッサリ切ることができない。だから決断を先送りし、問題は静かに深刻化していくのである。
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