システム自身が次の一手を選ぶなら、企業はその判断をどう信頼すればよいのか。ネザーカットCTOが提唱する答えは、AIの行動の範囲を定める「ポリシー」だ。同CTOは「社内規定や手順書に書かれていた規則を、システムが自ら実行する。確信度が低ければ処理を止め、影響の大きい処理は顧客の承認を待つ」と説明する。例えば既に3回連絡した顧客には、それ以上メッセージを送らないといった規則も設定するということだ。
ベイツCEOは、AIガバナンスの位置付けをこう説明する。
「AIが多くのことをできるようになったからといって、何でも自由にやらせてよいわけではありません。企業が定めた境界の中でAIに自由に行動させ、その行動を観察し、監査できるようにします。ガバナンスはAIにかける『ブレーキ』ではなく、AIを大規模に展開するための『ライセンス』なのです」
ただし、AIが何を話したかを記録するだけでは、AIがなぜその行動を取ったのかは分からない。Orchestratorは、どの選択肢を検討して何を除外し、どの方針を適用し、最終的にどの担い手を選んだかを残す。ネザーカットCTOは「AIは完了した顧客対応から、うまくいくやり方を学んで計画を改善する。ただし、企業が定めたルールをAIが黙って書き換えてはならない」と強調する。
AIが学習で変えられるのは自らの進め方だけで、ルールを変えられるのは企業だけだ。そのため企業は、対応の質の向上をAIの学習に任せながら、何を許し、何を禁じるかの線引きを自社で決めていく。
ではAIエージェント導入を成果につなげるために、企業は何から始めればよいのか。ベイツCEOは「大きく考え、小さく始めてほしい。一つの領域で一つの成果に集中し、結果を確かめた上で広げていく。一つ一つの投資が、次の投資を容易にする」と話した。
AIに何を目指させ、どう連携させ、どこまで任せるか。この3つを一つの領域で決め、成果を確かめながら広げられるかどうかが、AIエージェントの導入の成否を分けそうだ。
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