環境のため、社会的責任として、日本企業は3R(リデュース、リユース、リサイクル)に長年取り組んできた。ただ、それが利益につながっているかと問われると、言葉に詰まる企業もあるだろう。
リサイクルは、企業の利益にならない――こうした前提が変わりつつある。重要鉱物の供給元が一部の国に偏り、欧州では再生材の使用を義務化する動きも出てきている。政府は4月、レアアース磁石を含む永久磁石について、2030年に原材料の約3割をリサイクルでまかなう目標を掲げた。リサイクルは「環境部門の仕事」から「経営の課題」へと位置付けが変わり始めている。
とはいえ、現場では「必要なのは分かるが、採算が合わない」という声が根強いという。再生材は質も量もコストも「バージン材」(新たに採掘・生産した材料)に及ばない。廃棄物の回収・選別を担う事業者との連携も十分ではない。需要をどう生み、回収網への投資を誰が担い、価格変動のリスクをどう分け合うのか。経済産業省とJX金属、日立製作所が、循環を事業として成立させる条件を議論した。
本記事は、日立製作所が主催したイベント「Hitachi Social Innovation Forum 2026 JAPAN」(9月3〜4日開催)のセッションから「サプライチェーン連携で描く循環型製造業と産業成長の新たな方向性」を取材したもの。
資源を使う製造業の立場から口火を切ったのが、日立製作所の中津英司氏(執行役常務 コネクティブインダストリーズセクター インダストリアルプロダクツビジネスユニットCEO)だ。
中津氏は、重要鉱物の供給の偏りや地政学リスク、 欧州の規制強化を挙げ、いずれも限りある資源をどう産業競争力につなげるかというテーマに収束すると述べた。
「製造業にとってサーキュラーエコノミー(循環経済)は、もはや環境だけの話ではない。事業を継続し、競争力を高めるための経営そのものの課題だ」
これを政策の側から受けたのが、経済産業省の三牧純一郎氏(イノベーション・環境局 GXグループ 資源循環経済課 課長)だ。三牧氏は、産業界が長く担ってきた3Rについて「不法投棄や最終処分場不足など、国内の課題への対応がメインだった」と振り返る。消費者や自治体の協力を得られる点は日本の強みだが「ビジネスっぽさが強くない」という限界も抱えていた。
サーキュラーエコノミーを産業政策として扱う背景には、資源確保と環境対応の双方がある。三牧氏は「まさにビジネスに直結した課題になってきている」と述べる。同省は産業競争力の観点から取り組みを強めている。
三牧氏が具体策に挙げたのが、重要鉱物のリサイクルだ。
4月の「循環経済に関する関係閣僚会議」で「循環経済行動計画」が決定し、その中に「メタルリサイクル推進戦略」が盛り込まれた。これまで取り組みごとの目標はなかったが、今回は、2030年時点で国内で供給される永久磁石の原材料のうち、約3割をリサイクルによってまかなうというマクロ目標を設定した。当面はPIR材(工場で出る端材)の再生が中心で、市場に出た製品からの回収は中長期の課題だ。
ただし再生材の市場には、需給がお互いに左右される難しさがある。「供給がある程度見えないと需要側も計画が立てられないし、需要が見えないと供給側も計画が立てられない」と三牧氏。この“鶏が先か卵が先か”を解くため、同省は4月施行の改正資源有効利用促進法で、政令が指定する製品の製造事業者に再生材の利用目標の設定と報告を義務付け、需要創出と設備投資支援を組み合わせる。
政策で背中を押す理由を、三牧氏は「再生材を使うと安いのではないかと思っている方も多いが、実際には質も量もコストも全部バージン材に劣っている例が多い」と率直に述べた。最初は苦しくても、最後にはビジネスとして成立する状態へ持っていくパッケージを、民間と議論しながら組み立てる考えだ。
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