この負担は、訴えられる側にも重くのしかかる。米テック系メディアのFuturismの取材に応じた弁護士によると、従来なら約2000ドルで片付いた紛争が、相手がAIで申し立てを繰り返したために2万ドル(約300万円)を超えたという。5000ドル程度で済むはずの案件が7万ドルを超えた例もある。
米フロリダ州では、数百ドルの管理組合費の滞納を巡って住民夫婦が起こした本人訴訟が、AIで書面を量産するうちに「管理組合と弁護士が組織ぐるみで住民をだましている」と陰謀論的に主張を拡大させ、泥沼化した。ある弁護士は、以前ならこうした原告も高額な弁護士費用を払えずに途中で諦めていたが、AIの登場によって低コストで訴訟を継続できるようになってしまったと指摘する。
企業も決して無縁ではない。米国の訴訟データ分析会社Lex Machinaによると、連邦裁判所の雇用訴訟に占める本人訴訟の割合は、2021年の10%未満から、2025年には16%超へと上昇している。
AIがもっともらしく捏造した「架空の判例」が裁判所に提出されるトラブルも後を絶たない。そうした事例を集めたデータベースによると、2026年8月末時点で確認された1981件のうち、本人訴訟の当事者によるものが1136件を占め、プロの弁護士による793件を上回っている。AIの出力内容の真偽を確かめずに法廷へ出してしまうリスクは、弁護士よりも一般の素人原告の方がはるかに高い。
本人訴訟の当事者であっても、司法による処分と無縁でいられるわけではない。根拠のない訴えに対しては制裁金が科されることがあり、濫訴(むやみに訴訟を繰り返す行為)を続ける原告には、新たな訴訟を起こす前に裁判所の事前許可を得るよう命じた例もある。
しかし、企業側の代理人を務める米法律事務所Davis Wright Tremaineは、原告側に支払い能力がなければ、裁判所が費用の負担命令を下したところで回収できないケースが多いと指摘する。その場合、膨れ上がった巨額の防御費用は、訴えられた側が自腹で泣き寝入りするしかないのが実情だ。
なぜGoogleは、OpenAIとAnthropicに勝てないのか? 「世界最大の計算資源」の使い道
OpenAI「Dots」に追随なるか Google「Gemini Agent」参戦で過熱するパーソナルAI競争
請求書は青天井 Microsoftトップが「AIモデル大手に主導権を渡すな」と叫ぶ真意
「学歴は無価値に」 米トップエンジニアが明かす、AI時代に“大化けする人材”の共通点
売上高93%増のPalantirが独走 AI競争の主戦場「制御層」を奪い合う3陣営
中国は敵ではない NVIDIAトップが警告する「米中共存」とAIインフラの盲点
人間は「取締役」、AIが「CEO」 サム・アルトマンがAGI論争を終了させてまで語りたかった「ASI」の未来図
「人間がコードを書く時代は終わった」 “Claude Code”が引き起こす「知能の価格崩壊」
AIによる“社会崩壊”まで残り3年 トップ識者が警告する「地獄のシナリオ」
AI競争は「Googleの圧勝」で終わるのか? Gemini 2.5 Proの衝撃© エクサウィザーズ AI新聞
Special
PR注目記事ランキング