米Tesla(テスラ)やSpaceXを率いるイーロン・マスク(Elon Musk)氏は、AIが人間を大きく上回る「超知能」に到達しても、デジタルの世界だけで働くAIでは、世界の財やサービスの生産を20〜30%程度増やす効果にとどまるとの見方を示した。
一方、ロボットがAIによって高度な知能を持つようになれば、その経済的価値は飛躍的に高まると主張した。
マスク氏は、伝記作家でジャーナリストのウォルター・アイザックソン(Walter Isaacson)氏との対談で、フィジカルAI(物理世界で動作するAI)の重要性について語った。
アイザックソン氏が「現実世界で働くAIは、現在のLLM(大規模言語モデル)より10倍、あるいは100倍も重要になる」と述べると、マスク氏は「全くその通りだ」と強く同意した。
マスク氏は、その理由をイルカやクジラに例えて説明した。これらの動物は高い知能を持つが、人間のような手や指がないため、複雑な物体を操作することができない。AIも同様で、知能がいくら高くなっても、現実世界に働きかける物理的な手段がなければ、その能力を十分に生かせないという。
一方、人型ロボットなどがAIによって高度な判断力を獲得すれば、物を加工したり、科学実験を実施したりできるようになる。マスク氏は「知能の価値は飛躍的に大きくなる」と強調した。
デジタル超知能による20〜30%の生産増は、年間の生産額で約30兆ドル(約4500兆円)の上積みに相当すると概算した。ただし、これは自身の大まかな推測であり、実現時期や具体的な試算根拠は示していない。
さらにマスク氏は、ロボットの普及と宇宙進出が進めば、経済規模が現在の地球の100万倍に達する可能性もあると予測した。
生産能力が飛躍的に拡大し、人間が望むモノやサービスを極めて容易に供給できるようになれば、従来の通貨は重要でなくなるという。通貨そのものは残るものの、将来は電力(ワット)やエネルギー、質量(トン)といった物理的な尺度が経済の価値基準になるとの見方を示した。
本記事は、エクサウィザーズが運営するAI新聞内の記事「LLMでも大きな経済効果、ロボットなら桁違い Musk氏が語るAIの未来」(2026年10月21日掲載)を、ITmedia ビジネスオンライン編集部で一部編集の上、転載したものです。
湯川鶴章
AIスタートアップのエクサウィザーズ AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。17年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(15年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(07年)、『ネットは新聞を殺すのか』(03年)などがある。
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