インタビュー
「本社にこもっている経営者はダメ」 セーレン・川田達男会長が徹底する「現場主義」:セーレン・川田会長の革命【後編】(1/3 ページ)
倒産寸前だったセーレンを再建し、日本を代表する総合繊維メーカーに育て上げた川田達男会長。川田氏の成功の要因となったのは、経営トップになってからも現場主義を貫き通したことにほかならない
企業の経営トップたるもの、一国の主として、本社にいるのが当たり前と考える人も少なくないだろう。だが、総合繊維メーカー大手・セーレンの川田達男会長にはそれが当てはまらない。セーレンの本社は福井市だが、基本的には大阪支社に川田氏の席があり、自身も数十年前からずっと大阪に居を構えている。
これには明確な理由がある。
「長年、私は繊維の中心である大阪で営業をやっていました。世の中の流れを肌で感じ、新しいことに挑戦すべきだと声を上げていましたが、経営陣は全員福井の個室にこもっていて、現場の声に耳を傾けてくれませんでした。昔は、偉い人は雲の上の存在だったのです。そのことで非常に苦労しましたから、(1987年に)社長になってからも営業現場を離れずに大阪に残り、そのまま居着いたのです」
セーレンの川田達男会長兼最高経営責任者(CEO)。1940年、福井県生まれ。62年に明治大学経営学部卒業後、福井精練加工(現セーレン)入社。87年、社長就任。その後、最高執行責任者(COO)、CEOを兼務し、2014年から現職
現場ファースト
現場ファースト――。これが川田氏の企業経営の原点となっている。例えば、社長就任後に打ち出した「五ゲン主義」。これは現場、現物、現実という製造業で大切されている「三現主義」に、原理、原則を加えた考え方のこと。この中でもとりわけ現場を重視する。
「現場が全てだという発想で仕事をしています。現場がうまくいくためにトップや管理職がどう立ち回るのかが大事。あくまでも現場主義が基本です」
それを体現するために、社長就任時に経営陣の役付を外して平取(平取締役)にしたほか、組織を現場がトップとなる逆ピラミッドに変えた。川田氏が語る現場主義に迫る。
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