桐谷健太さん主演「ミラクルシティコザ」制作の舞台裏 プロデューサーが見いだした「地方に眠る商機」とは?:沖縄を舞台に70年代と現代が交錯(2/4 ページ)
桐谷健太さん主演の映画「ミラクルシティコザ」が、2月4日に全国公開される。バックアップしたのは制作プロダクションのオフィスクレッシェンドだ。2017年から「未完成映画予告編大賞」という映像コンテストを実施して次代を担うクリエイターを発掘しようとしている。その真意を同社の神康幸副社長に聞いた。
作品審査の効率化にもつながった
このコンテストは応募方法もほかと一線を画す。通常は、監督プロフィール、脚本、作品のDVD、スチールデータが入ったUSBなどを郵送する形がとられるが、本コンテストでは、基本的には予告編の動画データと作品資料のPDFをインターネット経由で専用サイトへ送信すれば良い。こうした形式のコンテストは、当時は国内にも海外にもなかったという。
実は、これによって審査を効率化するという狙いもあった。従来のやり方であれば、作品DVDなどを審査員の人数分コピーしなければならない。応募件数が増えれば増えるほど、時間や労力もかかるし、データ紛失のリスクも否定できない。
デジタル化によってそれを解決できないかと考え、システムをスクラッチで構築した。
「プログラマーに相談し、映像はYouTubeですぐに見られて、脚本データも簡単に閲覧できるシステムをつくってもらいました。100万円程度かかりましたが、いつでもどこでも作品を視聴できるし、審査員の採点や評価もシステム上でリアルタイムに可視化されるようになったのは非常に便利です」
応募するクリエイターにとってもメリットは大きい。ギリギリまで作品の制作を粘ることが可能だからだ。現に、第1回のコンテストでは締め切り間際に200作品くらいが一気に届いたという。
「最初の年はどれだけの作品が集まるか分かりませんでした。プロモーションを大々的にやったものの、締め切りの2週間前でも十数本しか来なかった。しかも過去につくった作品をサンプルにしたようなものが多く、正直失敗したと思いましたよ。そうしたら、締め切り間際に、どっと200件も送られてきたのです」
コロナ禍での変化
地域の魅力や若手クリエイターの掘り起こしという大義名分があるとはいえ、慈善事業でやっているわけではない。当然、ビジネス的な観点は不可欠である。それは何か。
このコンテストによる映画作品については、オフィスクレッシェンドが大半の権利を保持するため、魅力あるヒットコンテンツを生み出せれば、莫大な収益が期待できるのだ。通常、大規模な映画の場合に制作プロダクションは、制作費と宣伝費を合算した金額を収入が上回った際、成功報酬としてリクープ後金額の数%を受け取る程度。0%のこともあるという。
映画は博打(ばくち)的な要素があるものの、当たれば大きい。オフィスクレッシェンドはここにかけているのだ。ただ、唯一の誤算はコロナ禍だという。撮影が何度も延期となり、公開も遅れた。さらに上映の規模も縮小せざるを得ない。「この2、3年は思い通りにいっていない」と神氏は吐露する。
現実的にコロナ禍は映画業界にとって深刻な問題だ。一般社団法人日本映画製作者連盟によると、2020年の年間興行収入は1432億8500万円と、00年以降で過去最低を記録した。映画の現場では具体的にどのような変化が起きているのか。
「コロナ禍で大変なのは、小さな規模の映画がよりリクープ(費用回収)しづらくなっていることです。満席に次ぐ満席で、口コミによってお客がまた集まるという循環がないと、ミニシアター系の映画は成果が出ませんが、現状は客数も制限されています。映画館も生き残らないといけないため、お客が集まるかどうか分からない作品を流すよりも、確実に宣伝してくれる作品を選びます。つまり、魅力ある映画をつくるだけでなく、宣伝して、いかに人を映画館に呼び込めるかというところまで作り手が考えないといけなくなりました」
コロナ禍によって、これまで以上に映画のクリエイターに求められているものは多くなったのである。
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