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事故現場の状況をAIが自動作図 MS&AD副社長に聞く「新時代の保険ビジネス」シリコンバレーに社員を派遣(2/5 ページ)

三井、住友、日本生命、トヨタ自動車などいくつもの企業グループと親密な関係を持つ強みを生かして、世界トップ水準の保険・金融グループの実現を目指そうとしているのがMS&ADホールディングス。樋口哲司副社長にDXを核にした経営方針を聞いた。

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世界でトップ10に入り8位に

――「リステック」のサービスは具体的にどの業界で使われていますか。

 大手小売チェーン店で使われています。これまでは電灯などの設備機器が故障するたびに修理していたのを、過去の修理データなどから判断して、これくらいのタイミングで壊れると教えてくれます。また、ほかの設備もまとめて更新した方が効率的になるといったプログラムになっていて、これを提案したところ、店舗の設備更新が大幅に効率化され、顧客にも喜ばれました。

――21年は自然災害が少なく、自動車事故件数も減ったので、予定していたグループ全体での年間利益3000億円は達成できそうですか。

 達成できる見通しです。国内の自然災害は少なかったですが、海外が多くて欧州で100年か70年に一度という洪水が起きました。米国でもハリケーン、アイダの被害が大きく、海外での保険金支払いがかなり出ました。収入保険料もコロナで落ち込むのではと思っていましたが、順調に入ってきています。

――世界レベルではトップ10を目指しているようですが、現状はどうですか。

 「フォーチュン」誌が毎年出している金融・保険業ランキングでは売上高でトップ10を目指していまして、21年は8位でした。その他の指標も良かったのですが、資本効率を示すROEだけは、株価が上がったので目標としていた10%には届かずに8.5%にとどまりました。


中期経営計画「Vision2021」(2018年度〜21年度)の達成状況 財務数値目標

――国内の自然災害が増えているので火災保険料が上がるようですが、今後の保険料の見通しはどうですか。

 22年10月に値上げを予定しています。これは損害保険料率算出機構が住宅の参考純率を10.9%引き上げたので、これを参考に火災保険料が引き上げになると思います。中期、長期的には自然災害が増えてきて気候変動の影響も出ているので、長い目で見ると保険料の引き上げは続くと思います。

 しかし、10.9%がそのまま保険料の値上げになるのではなく、保険各社のデジタルを使った企業努力により、値上げ幅をできるだけ抑制していかなければならないと思います。

――2年ほど前から、火災保険料でリスクに応じて差をつける商品が出てきています。貴社でも、過去の事故数、管理状況によりマンションなどの保険料に格差をつけています。またハザードマップ内に建つ家の保険料には段階的に差を設ける保険も発売されているようです。こうした動きへの対応はどうされますか。

 マンションについては、保険金の支払いは管理状況や築年数によって違うので、保険金の請求件数などを保険料に反映させることを各社がやってきています。マンションの管理状況によって保険料に格差を設ける商品も出しています。

 ただ、ハザードマップによって格差を設けるのは、少し時期尚早かなと思います。自治体によってハザードマップが整備されていないところもあるからです。

 いま、金融庁が有識者会議を設けて水災保険の在り方を議論しているので、その結論を待ちたいと思います。ある程度そうした水災リスクに応じた保険の必要性はあると思うので、どういうやり方がフェアなのか見定めていきたいと考えています。

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