事故現場の状況をAIが自動作図 MS&AD副社長に聞く「新時代の保険ビジネス」:シリコンバレーに社員を派遣(3/5 ページ)
三井、住友、日本生命、トヨタ自動車などいくつもの企業グループと親密な関係を持つ強みを生かして、世界トップ水準の保険・金融グループの実現を目指そうとしているのがMS&ADホールディングス。樋口哲司副社長にDXを核にした経営方針を聞いた。
自動運転の保険負担の在り方は?
――将来の自動運転に対応した自動車保険の負担の在り方が検討されています。自動運転車が事故をした場合、誰がどう負担するのか、現在の検討状況を教えてください。
「レベル3」とか高速道路上とかやりやすいところから始まっていきますが、自動運転が本格的に実現するのは、まだ先になると思います。
例えば、真直ぐ進むと人をひいてしまいそうな時、よけた先にも、また人がいるなど、究極の場面でどちらかを選択するプログラミングを組まなければなりません。
また、自動運転では人が飛び出した場合、車は止まります。そうすると歩行者がどんどん車の前に出て行くようになって、車が動けなくなるなど、極端な事象も考えられます。
このような倫理的な問題や運用上の交通トラブルも一緒に解決していくことも求められます。
――事故の責任は誰にあるかということで自動車保険は動きますね。
自賠責保険で事故の責任は運行供用者、車を持っている人、運転している人に責任があるという基本的な考え方は、「レベル3」までは踏襲されることは確認されています。
ただ、本当に自動運転で事故になった際に、運行供用者の責任なのか。プログラムでミスしたのか、あるいはプログラムの更新がまずかった場合はメンテ業者の責任になるのか。ハッキングされた場合どうするのかなどの課題が出てきます。ここは法律で責任の主体を明らかにしていかないと簡単には解決できない問題です。
今のところは運行供用者責任で進んでいきますが、机上では考えられないような事例が積みあがってきて、新たな責任の在り方などを検討しなければならないことも起きると思います。いずれにしても、普及状況やニーズを踏まえながら、お客さまにより納得感のある制度や商品の検討を進めていきます。
――MS&ADホールディングスは、三井、住友、日本生命、トヨタなど多様な企業グループにまたがっています。今後、事業を展開する上で有利になると思えますが。
いろいろな企業グループと緊密な関係があるのはわれわれの強みです。日本を代表する企業群で、それぞれの業種のトップ企業もあることで、多くの情報が入ってきます。
トヨタとの関係は、MS&ADグループの中のあいおいニッセイ同和の前身である千代田火災の主要株主がトヨタだったことから脈々と受け継がれてきています。トヨタはコネクテッドカーを進めていますし、車の走行データを見て使えるのは自動車保険、事故防止には有利だと考えています。
――今後の海外での展開は、どんな計画を立てていますか。
アジアに強く、特にアセアン(東南アジア諸国連合)では現地の保険会社を含めてもナンバーワンのシェアを持っています。経済成長が期待できるので、これを取り込んでいきたいと思っています。
欧州では英ロイズ保険市場上位のシンジケート、アムリンを2016年に買収して傘下に持っているので、これを生かしていきたいと思います。北米では大きな事業展開にはなっていませんが、損害保険市場の40%は北米です。今後は事業を拡大していきたいと考えています。
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