PS5 なぜ2年も品不足に苦しんだのか(2/3 ページ)
抽選販売が続くなど、異例の対応が続いたソニーの家庭用ゲーム機「プレイステーション 5」が、ここにきてようやく通常の販売に戻りつつありある。なぜ2年以上も品不足に苦しんだのか。3つのポイントを挙げて考察する。
日米欧同時発売が裏目か
PS5が2年間も品不足になった理由の一つ目は、発売するとき(2020年11月)、日米欧で同時に出したことで、それが裏目になる流れになったことです。もともとゲーム機は、発売時に極端に需要が集中する傾向にあります。日米欧で出せば、各地の需要を見て、出荷台数のバランス調整を取るだけでも大変です。
それでもソニーが同時発売に踏み切ったのは、PS4の発売時に受けた批判の影響があります。
PS4のときは、まずゲーム市場の主戦場である米欧で先行発売し、数カ月遅れで日本にお目見えしました。そのためか、PS4は比較的入手しやすかった一方で、「日本市場の軽視」という関係者やファンから不満が出ました。
PS5の発売直前、SIEのジム・ライアン社長がインタビューで以下のように答えています。
Q:以前のインタビューで、PS4の日本の発売時期を遅らせたことを後悔していました。その場で「PS5は世界で年末商戦期に発売するつもり」と言わなかったのはなぜですか。
ライアン社長:それは、最終的な決定がされていなかったからです。インタビューでも話した通り、私自身はPS5を日米同時発売をしたいと思っていましたが、決定を100%にするには、さまざまなピース(かけら)がはまらないとダメでした。だから、そのときは言えなかったのです。
PS4の発売時にも欧米では、半年以上品不足が発生しました。PS5の出荷計画は、PS4に準じている流れですが、先行発売のエリアに日本が加わると、供給が大変になるのは、予想できたはずです。
流通の混乱・増産できない誤算
それでもソニーは、旺盛な需要に対しても、即座の増産で対応できる自信があったからこそ、日米欧同時発売に踏み切ったといえます。アジア地域の発売も、スムーズなものでした。
しかし、そこに世界的な物流の混乱があるところまでは、さすがに予想外だったでしょう。その上、ロシアのウクライナへの侵攻までありました。取材をすると、製造した商品が予定通りに届かない……ということもあったようです。
ソニーは、PS5の出荷計画もなかなか動かさなかったように、増産を最後まで諦めなかったようですが、結果として2021年度のPS5の出荷数は、計画に対して8割弱にとどまりました。このPS5のスムーズな増産ができなかったことこそ、最大の誤算ではないでしょうか。世界情勢がかんでいるので「仕方ない」といわれるとその通りですが、世界中での機会損失を考えると、とんでもない額になりそうです。
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