乗り換え発生で不便 それでも「北陸〜関西」の移動需要が減らない理由
北陸新幹線延伸に伴う乗り換えの発生によって「北陸〜関西」の移動需要が急激に縮小することは、いまの段階で考えづらい。実は、この2地域は観光・ビジネスでのつながりが太いのだ。
北陸と京都・大阪を結ぶ特急「サンダーバード」は、直近の2023年末(12月28日〜1月4日)には16万8000人を輸送。JR西日本の管内では瀬戸大橋線の特急(「しおかぜ」「しまんと」など)と並び、利用者の多さで知られている。その歴史は、近代化と増発の繰り返しであった。
関西〜北陸間は、1964年に運行を開始した特急「雷鳥」にかわり、いまも現役の681系・683系車両への置き換えも兼ねて、1995年に「スーパー雷鳥・サンダーバード」の名称を設定。2年後には新型車両での特急列車が「サンダーバード」に改称した。
当時の最新鋭車両を投入した「サンダーバード」が与えたインパクトはすさまじいものがあった。運行開始当初には、英国発の人形劇「サンダーバード」とコラボした広告が各地で流れた。「速い! 信じられない! 北陸が近くなるぞ!」と登場人物が歓喜するCMを覚えている方も多いだろう。
開業当初、JR西日本は筆者の勤務先を含め複数社に「御社は北陸への出張で、鉄道利用をされていますか?」とヒアリングをしていたという。JR西日本にとってはそれだけ社運を賭けたものだったのだろう。いつしか「サンダーバード」の運行は朝の大阪発、夜の金沢発を中心に高頻度になっていき、1日1万6000人が利用(2012年時点)する特急列車として成長していったのだ。
一方で、並行する高速バスは利用者が9万2000人(1994年、京都〜金沢間)から3割近くも落ち込み、程なく運転本数が半減。富山空港〜関西国際空港の空路もあえなく休止に追い込まれた。それほど”サンダバ効果”は目を見張るものがあった。
昨今の「サンダーバード」の利用者は減少傾向ではあったものの、観光・ビジネスで一定レベルを維持していた。特にビジネスに関しては、福井県・石川県南部は電子機器・部品などの製造で技術を持つB2B(企業間取引)企業や大規模な工場が多く、企業同士での北陸〜関西の結び付きの強さから、双方向の出張需要はかなり頻繁なものであった。
<参照:北陸新幹線・敦賀延伸 迫る「対東京シフト」の大転換>
開業から何度か「サンダーバード」に乗車したが、「午前9〜10時台の大阪発」「午後7〜8時台の金沢発」など、利用が多い便は以前と変わらず混雑しているように見受けられる。
敦賀駅での乗り換えの不便さだけがクローズアップされるのは仕方ないが「時間短縮+乗り心地アップ」というメリットがあると考えても良いのではないか。もっとも、サンダーバードは敦賀駅〜大阪駅間で運行が続いており、強風に極度に弱く運休・迂回や徐行による遅延、激しい揺れの原因である「湖西線経由」に変わりはない。
今後、敦賀駅〜新大阪駅間の新幹線延伸は実現するのか。現時点での問題点と、各方面の主張をまとめていこう。
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