都市圏の発展は陣取り合戦 GWも東京シフトの傾向
北陸新幹線によって「東京シフト」が進む傾向は、2015年の長野駅〜金沢駅間開業の際にも見られた。乗客数で見ると、新幹線開業前は関西方面(サンダーバード)が1日1万6000人、首都圏方面は8000人だったのが、新幹線の開業後には首都圏への移動が3倍に。東京寄りの富山県・石川県では、人流面での逆転を早々に許している。
また観光面でも、開業年には首都圏からの来訪者数が関西を逆転。ビジネスでも「大阪に本社がある会社でも、全体会議は東京で」というケースが続出した。大学への進学も東京方面が増加するなど、多方面で影響が見られたという。
また、北陸新幹線の今年のGW(4月26日〜5月6日、11日間)の予約状況を見ても、首都圏〜北陸の予約は15%前後も伸び、乗り換えが必要な関西は前年と変わらないレベルであった。このまま行くと、福井県でも金沢延伸時と同様の「東京シフト・大阪スルー」が進む可能性が高い。
かつ福井県・石川県南部は、小松空港から羽田空港への空路を介して、昔から首都圏と付き合いがある。建機メーカー「コマツ」の関連企業が集積する石川県小松市から、新幹線・航空ともに首都圏に午前中に到着できるようなダイヤ設定が今でもなされており、既に東京シフトが進んでいる業種・地域もある。
実質地域内総生産の成長率(GRP)でも他地域に差をつけられ、製造業・建設業を中心に関西から首都圏への企業移転も相次ぐ。都市圏の成長は「どの地域を味方につけるか」という陣取り合戦のようなものでもあり、コップの中で争って“ビジネスの飯のタネ”をなくす関西圏より、東京へのシフトが進むのは自然な流れだ。
いくら新幹線が快適と言えども、高低差を伴う乗り換えは、やはり「うっとうしい!」の一言。長期的には利用者の脱落につながる。ユーザーとしては、米原経由であろうがなかろうが、関西の政財界が協力して、乗り換え解消・新幹線での直通実現に動いていただきたいものだ。
宮武和多哉
バス・鉄道・クルマ・駅そば・高速道路・都市計画・MaaSなど、「動いて乗れるモノ、ヒトが動く場所」を多岐にわたって追うライター。幅広く各種記事を執筆中。政令指定都市20市・中核市62市の“朝渋滞・ラッシュアワー”体験など、現地に足を運んで体験してから書く。3世代・8人家族で、高齢化とともに生じる交通問題・介護に現在進行形で対処中。
また「駅弁・郷土料理の再現料理人」として指原莉乃さん・高島政宏さんなどと共演したことも。著書「全国“オンリーワン”路線バスの旅」(既刊2巻・イカロス出版)など。23年夏には新しい著書を出版予定。
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