「なんだか、AIみたいですね」 ロジカル上司が部下に嫌われる理由:「キレイごとナシ」のマネジメント論(3/4 ページ)
「データで正しく説明したのに、なぜ伝わらない?」。元コンサルの上司が「AIと話しているみたい」と部下に言われた本当の理由とは。論理よりも大切な“伝え方”を考える。
相手の行動を変えられない話し方に価値はない
私自身、20年近くコンサルタントとして働いてきた。職業柄、客観的なデータを使い、ファクトベースで話すことを徹底的にたたき込まれてきた。その癖は簡単には抜けない。
「分かりにくい」と言われることはほとんどない。しかし、相手が本当に納得し、行動に移すかどうかは別問題だ。
例えば、ある営業部長に戦略を説明したときのこと。私はこう語った。
「こうした結論に至ったのは、次の3つの根拠があるからです。図表にもそれが表れています。ご納得いただけますか?」
「とても分かりやすく説明していただき、ありがとうございます」
「本当に……?」
「え?」
「いや、本当に、ご納得いただけたのかと……」
このように念を押したのには理由がある。ある課長に「部長は、横山さんの話を聞いても、まったく分かっていませんよ」と言われたからだ。
実際に本音を聞いてみると、部長は「分からない」と言うのが恥ずかしかったのだという。
一方、私の先輩コンサルタントは違った。
あるクライアント企業を訪問した際、ドラゴンズが好きな部長だと分かると、先輩は10分でも20分でも昨日の試合の話で盛り上がる。そして本題に入ると、「ま、こんな感じでやっていきましょう」と、図表を軽く見せるだけで終えてしまうのだ。
「あんな説明でいいんですか?」
私が尋ねると、先輩は軽く笑って言った。
「これまでと行動を変えてもらえるなら、それでいいんだよ」
そしてくぎを刺すようにこう続けた。
「目的は何だ? 俺たちが“正しい”話し方をすることか? それとも、経営のために“正しい”行動をしてもらうことか?」
その言葉は、私の胸に突き刺さった。私は自分の話し方に酔っていたのかもしれない。相手のためではなく、自分の満足のために話していたのではないか、と。
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