700万円以上使う“超富裕層向け”カード? 三井住友カードが最上位で仕掛ける“二兎追い”戦略:「ポイント経済圏」定点観測(2/5 ページ)
年会費9万9000円と高額だが、年間700万円以上決済すると11万円分の継続特典が得られる「三井住友カード Visa Infinite」。このような還元を行う理由は何なのか?
700万円の壁
「年間利用額700万円を超える方に向けたカード」──三井住友カードの伊藤亮佑執行役員は、Visa Infiniteの位置付けをこう繰り返した。年会費9万9000円で継続特典が最大11万円分。一見すると年会費を上回る還元が受けられる設計だが、これを手にするには年間700万円の利用が条件となる。
三井住友カードが展開する個人向けのプラチナクラス以上のカードは3種類ある。基本還元率で見ると、プラチナプリファードとプラチナ、Visa Infiniteのいずれも1%だ。しかし、決定的な違いは年間継続特典の設計にある。
ゴールドは年間100万円の利用で1万円相当のVポイントが付与される。プラチナに継続特典はなく、プラチナプリファードは100万円刻みで1万円分のポイントが加算され、上限は400万円で4万円分だ。
それに対して、Visa Infiniteは年間400万円の利用で4万円分、700万円で11万円分のポイント付与という2段階の構成になっている。
この構造が、利用額によって最もお得なカードが変わる理由だ。プラチナプリファードは100万円刻みで確実に還元が積み上がる。一方で、Visa Infiniteは700万円に到達して初めて大きな還元を得られる。
年会費の差を考えると、700万円を下回る利用では、プラチナプリファードの方が実質的な還元は大きい。
つまり、Visa Infiniteは「700万円を超える人向け」のカードなのだ。なぜあえてこのような高いハードルを設けたのか。そこには単なる経済合理性を超えた、同社の戦略的な意図があった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
三井住友カードのクレカ投信積立で“大改悪” 5大ポイント経済圏の最新動向
企業が発行するポイントが消費活動に欠かせないものになってきた。多くのユーザーが「ポイ活」にチカラを入れているようだが、企業側はどのような囲い込みを図っているのか。最新動向をまとめてみた。
「JALとANA」どこで違いが生まれたのか? コロナ禍を乗り越えた空の現在地
インバウンド需要が旺盛で、日本の観光業界が盛り上がりを見せています。では、航空会社の業績はどうなっているのでしょうか。JALとANAの決算をベースに分析したところ……。
「年収700万円」の人が住んでいるところ データを分析して分かってきた
「年収700万円」ファミリーは、どんなところに住んでいるのでしょうか。データを分析してみました。
「PayPayで送って」とLINEする高校生 現金とデジタルの狭間で揺れる金銭感覚
QRコード決済が進む中、お小遣いも「送金する」という家庭が増えている。利便性を重視する一方で、「現金が良い」と答える場面も。それはなぜなのか?
ポイント経済圏の知られざる主戦場 データは小売業の未来をどう変えるのか?
楽天、Vポイント、Ponta、dポイントの4大勢力が展開するポイントビジネス。その本質は、単なる顧客の囲い込みではなく、別の意図があった……。
えっ、QUICPayが伸びてる? カード撤退ラッシュの裏で取扱高20%増の真実
QUICPayの撤退は、衰退ではなかった……。スマホ決済が主流となるなか、あえてプラスチックカードから手を引くことで、着実な成長を目指している。
ウォークマンの時代から続いたJCBのポイント、「使いにくい」は変わるのか
クレジットカード業界初のポイントサービスとして1981年に始まったJCBの「Oki Dokiポイント」が、2026年1月に「J-POINT」へと全面リニューアルとなる。その狙いと課題は何なのか?
「決済アプリ」の次なる一手は何か? PayPay金融グループの“第2章”が始まった
決済アプリのイメージが強いPayPayだが、着々と「金融サービス」としての立ち位置を築くための歩みを進めている。
三井住友「Olive」はなぜ選ばれる? 500万アカウント達成までの舞台裏
三井住友銀行のOliveが急成長している。20代を中心に支持を拡大する理由はどこにあるのか……。

